セカンドキャリアを楽しみたい中高年層が
今のうちにやるべきこと

 長年にわたって定着してきた年功序列の仕組みについて、入社した頃にはおかしいと感じていたにもかかわらず、長い間日本の同じ組織で働いてきた結果、疑問に思わなくなり、自分が先輩方にされて嫌だと思っていたことを、現在自分が後輩や部下にするようになってしまっているということはないでしょうか。

 もし人生後半のキャリア(セカンドキャリア)を楽しいものにしたい、必要とされる存在になりたい、と思うのであれば、ぜひ従来の習慣をアンラーンして、次のように心がけてみてください。
 
・自分の言いたいことよりまず相手の話を聞く
・要求、命令よりまず「確認」
・職場で無駄に外見の話をしない
・上から目線で説教、昔話、自慢話をしない
・自分の都合で電話せず、非同期ツールを使う
 
 また、私はオライリー氏にアンラーニングを行うコツを伺ったことがあり、そのときに次のような答えをいただきました。
 
「Get comfortable being uncomfortable.(居心地の悪い状態に慣れよう)」
 
 新しいことを始めれば、やはり最初は違和感がありますが、まずはその違和感のある状態に慣れることが重要です。今後、役職定年、定年・再雇用等、大きな雇用環境の変化を迎えていくと同時に、転職、独立といったいろんな新しいチャンスもあります。

 その際に、アンラーニングをしていないがゆえに無駄な損をしたりしないよう、ぜひ一度、ご自身の発言や行動の点検の意味も含めて、アンラーニングに取り組んでいただきたいと思います。

(2)アンラーニングに向けた練習

 ここで、アンラーニングに向けた練習としておすすめしたいアクションをご紹介しておきます。

・肩書きを名乗らない1カ月を経験する

 これはある有名企業で実施した研修で用いたアクションです。終業後や週末といった通常の仕事以外の時間には、役員、部長等の役職、肩書きを一切名乗らないで、1カ月間過ごしていただきました。周囲の人々の反応を見るのが目的です。

 大雑把に言ってしまうと、おそらく、そうしたときに見せる周囲の人々の対応が、皆さんの定年後に待っている反応ではないかと思います。

 私自身、大きな会社を辞め、誰も知らない名前の会社で働いたり、個人事業主になったりした経験を何度もしているのですが、勉強会の後の名刺交換などの際には、露骨に違いが出ます。まともな扱いをされないことも多くありました。フォローアップのためにメールを送った際の返信率も大きく異なります。

 ぜひ肩書きを名乗らない1カ月間で感じたことなどを日記やメモに残しておいていただきたいと思います。人間は持っていないことより、持っていたものを失うほうが精神的に辛いと言いますが、肩書きを失った後の周囲の変化は、ぜひ早めに経験していたほうが、将来の心の準備ができると思います。