AI時代に「残る仕事」「無くなる仕事」の決定的な差、公認会計士すら危ういワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

昨今は少子高齢化が進み、労働力人口の減少が懸念されています。今後は再雇用制度などを充実させ、定年退職後の人材を積極活用する企業がさらに増えるでしょう。ただ、近頃は生成AIやロボットの進化が著しく、「人間の仕事を奪う」懸念もあります。経験豊富な中高年層といえども、再雇用後に活躍し続けるには「リスキリング(スキルの再習得)」などの自己研鑽が不可欠になります。そのための具体的な手法や考え方を、後藤宗明氏の新刊『中高年リスキリング これからも必要とされる働き方を手にいれる』から一部抜粋してお届けします。

人間の仕事として残っていく仕事・その1

 雇用寿命の延長とAIの進化が同時並行で進む中、今私たちにできる準備としては、「自動化される仕事とそうでない仕事」の見極めがあります。ここでは、人間の仕事として残っていく仕事―すなわち、人間が行うべき「専門職」としての価値を持ち続ける仕事―の特徴を、2つの側面から挙げます。

 まず、1つ目が「『人間なのに』市場は引き続きエンタメ価値で生き続ける」です。

「人間なのに」市場とは、「人間なのにすごいね!」という価値がある市場のこと、として、私が講演などで最近お話ししているものです。

 例えば、2016年には、囲碁の世界でGoogleのアルファ碁というAIソフトウェアがプロの棋士に勝利したことが大きく報道されました。しかしこれによって、プロの棋士の仕事がなくなるかというと、それは想定しづらいと思います。将棋の世界で藤井聡太名人がAIと勝負して負ける事態となっても、当たり前ですが、名人が失職するような事態にはならないわけです。仮にAIより弱いとしても、「史上最年少で八冠」という偉業を達成し、最強の人間としての価値があるので、「人間なのにすごい」と言われ続けます。

 また、人間は速く移動して目的地に到達するために、徒歩、自転車、自動車、電車、飛行機と、さまざまな交通手段を活用しています。陸上男子100メートルの世界記録保持者のウサイン・ボルト選手がポルシェと競争して負けたとしても、アスリートとしての仕事はなくならないはずです。それは、「人間なのに速くてすごいね」という価値があるからです。

 あるいは、移動するにしても、浅草などの「人力車」の仕事はどうでしょうか。そもそも速く移動したい人は人力車に乗らないですし、街中を見ながら楽しむという移動手段です。いわば、エンターテインメントとしての価値があるものは、人間の仕事に残る重要な価値のある領域だと考えています。当たり前のことなのですが、技術的失業が加速する世界では、この人間が価値を発揮するエンターテインメントの世界の雇用がとても重要になっていくのではとみています。