まず、普通車両で聞こえてくるおしゃべりの声がほぼない。これは1人客が9割以上を占めるためである。普通車両では家族連れや観光客の団体も多く、移動中に黙々と作業したり仮眠を取ったりしたいビジネスパーソンと、道中もフルに楽しみたい彼らとの間には深い隔たりがある。

「S Work車両」の場合、仕事から仕事へ向かう人々は運命共同体でありつつ、それぞれが殻にこもって目の前のパソコンやスマホを向き合っている。

 一度、3人がけ席で筆者が通路側席に座っていたところ、真ん中席を開けて窓側に座っていたビジネスパーソンが新横浜・名古屋間のほとんどの時間をオンラインミーティングに費やしていたことがある。しかしこれが不思議なほど気にならなかった。すべての人が仕事モードなので、そこまでノイズとして意識されないのかもしれない。

ビジネスモードだからこそ
家族連れや観光客の声はノイズにならない

 また、情報漏洩の点を考えるためなのか、「S Work車両」であっても携帯電話の利用やオンラインミーティングをしている人はそれほど頻繁には見かけない。

 いずれにしても、個人的な感覚としては、家族連れや観光客の楽しそうな談笑ほどはノイズにならない。繰り返すが、これはこちらがビジネスモードだからそう感じるのであり、自分も観光客だった場合の感じ方は逆なのだろう。

 だからこそ、「S Work車両」を設けることで、ビジネスパーソンとそれ以外の客を分ける策は慧眼だったと思うのである。周囲に溶け込むか、周囲から浮くかは、人の居心地にこれほど関係がある。