例えば2%の金利で融資する場合、単純計算で50社に1社でも回収不能に陥ると採算が取れません。こういった背景から、リスクが高い創業直後のスタートアップにはまず貸してくれないというのが実情です(あるいは、担保によってリスクを減らそうとします)。

 スタートアップ側にとっても銀行融資の資金は借入金となりますので、期日までに利子をつけて返さなければなりません。創業直後のビジネスは些細なトラブルでも簡単に事業が立ち行かなくなることが多く、運転資金を確保しながら大胆な成長戦略を描くことは難しいものです。

書影『日本一やさしい スタートアップ投資の教科書』(ビジネス教育出版社)『日本一やさしい スタートアップ投資の教科書』(ビジネス教育出版社)
波多江直彦 著

 そのため、公的な融資制度や補助金を活用したり、自己資金や身内(親兄弟や親戚、友人)から借りて当座の資金を作ることが一般的ですが、先行投資がかさむスタートアップにとっては十分とはいえません。運転資金が足りなくなったり、自己資金を工面している間に競合にシェアを奪われたりする可能性もあります。

株式による調達の選択肢を増やし、ステージに応じて適切に組み合わせる

 そこで、短期間で爆発的な成長を遂げようとするスタートアップが取る手段として一般的になりつつあるのが、株式による資金調達です。借入のように返済する必要はなく、担保も必要ないことから、近年は自己資金や融資のみならず多様な投資家から株式による調達を行うスタートアップが増えています。