外食業界で「AI・ロボットに代替される店員」と
「生き残る店員」の違いとは?

外食業界で「AI・ロボットに代替される店員」と「しぶとく生き残る店員」の決定的な違い10年後のハローワーク』(川村秀憲 著、アスコム、税込1650円)

 旅行サイトのトリップドットコムでは、AIチャットボットで、さまざまな顧客の条件に対して自然言語で答えてくれます。

 賃貸のレオパレスでは、チャットボットに尋ねたいことを入力するだけでおすすめ物件や困りごとの解決策を提示してくれるサービスを、アシックスでは生成AIに価格帯や用途、色などを入力することで自分に合うシューズにたどり着ける機能を提供しています。

 これらは顧客の利便性だけでなく、何が求められているのか、何が売れ筋なのかを供給側が速やかに集約することができ、需要と供給をうまくマッチさせられる可能性を持っています。

 また、これも私たちがすでに経験していることですが、外食産業の現場では、注文をタブレットやスマホで行ったり、配膳をロボットが担ったりすることも珍しくなくなってきました。2021年から実験導入しているすかいらーくホールディングスでは、従業員の歩行数が42%、片付け時間が35%減り、ピーク時回転率も2%上昇したそうです。大きな効果と言えるでしょう。

外食業界で「AI・ロボットに代替される店員」と「しぶとく生き残る店員」の決定的な違い出典:『10年後のハローワーク』(川村秀憲 著/アスコム)

 定型的なファストフード店舗の場合は、注文~決済~調理~受け渡しまで、AIとロボットですべてを自動化することも可能です。実際、アメリカのマクドナルドは、2022年の段階で完全無人化店舗の実験を行っています。同時に、人から仕事を奪うことになるという意味合いでは、批判の声も浴びているようです。

 しかし日本では、外食産業は深刻な人手不足が明らかです。少しでも人手が減らせるのであれば、むしろ日本でこそAIロボット接客の普及がうまく進む可能性があるのではないでしょうか。外食大手のロイヤルホールディングスでは、なんと天ぷらの揚げ具合をAIに学習させているそうです。

 一方、すべての接客がAIやロボットに代替されるわけではありません。高級レストランでそれなりのお金を払う人は、やはりシェフのこだわりを味わいに来ています。季節の変化や顧客の嗜好(しこう)に合わせ、ベストの食材を仕入れ、調理の具合を変えたり、先進的な料理を作ったりするような創造的な接客は、AIには難しいでしょう。

 結局、人に接客されるよさがより洗練されていくと同時に、「人に接客されることの価値」が見いだされ、そこにお金を払うことになっていくのではないでしょうか。つまり生き残るのは、他人にはできない接客をする人になるわけです。