「ちゃんと働いているのに評価されない」「サイレント減点されている」……
あなたは職場でこういった「コスパの悪い」働き方をしていないだろうか?
あなたも、「職場で要領よく立ち回れる人」になって、「会社で自由と安寧を手に入れたい」と思ったことはないだろうか。
そんな思いに応える新刊が、『雑用は上司の隣でやりなさい』だ。最短出世中・現役エリートメガバンカーのたこす氏が「なぜか評価をされる人」が戦略的にやっている75のテクを明らかにした革新的な一冊として、各所で話題沸騰中。
地頭力よりも実力よりも大切な「超・圧倒的に役立つ」ノウハウが満載の本書。今回はそんな本書から「職場でカラー印刷をしてはいけない理由」について解説する。
社内の会議でカラー印刷はご法度
僕が勤めるメガバンクでは、数年くらい前からSDGs意識が高まってきていると感じます。ただし、今のメガバンクのSDGsはかなり歪んでいて、他の企業の人たちから見るとあり得ない文化へ進化しているのです。
そもそも、銀行は昔から多くの紙を使う慣習があったことからまだまだ紙の文化が残存しています。本部の洗練された部署ではペーパーレス化が進んでいますが、支店ではまだまだ紙の文化が根付いています。1日に印刷する紙の数は本当に多く、加えて銀行の書類は個人情報や企業の重要情報のかたまりです。ゆえに、新人の仕事のルーティンの一つに夕方に先輩たちから書類ゴミを回収してまとめてシュレッダーする業務が毎日あるくらいです。
それくらい紙の文化が中心の銀行のルールの一つに「お客さん向けの書類はカラープリンタ、社内向けの書類は白黒プリンタ」と言うものがあります。これはカラーだと印刷コストが高いだけでなく環境負荷が大きいということに起因しています。ですので、社内の会議等でカラー印刷を使うことは御法度になります。
白黒の書類をカラーで刷ったら、迷わず「全捨て」
これだけだと、他の企業でも良くある光景だと思いますが、このルールと銀行の独特な文化が組み合わさることで恐ろしい化学反応が起こります。
僕が若手の頃、社内で50人規模の営業会議があり、先輩から印刷をお願いされました。僕は当時まだこのSDGsルールを理解しておらず、カラープリンタで50部の書類を刷ってしまいました。それを見た先輩が僕に告げた一言は「まだ間に合うから白黒印刷に全て差し替えろ」でした。
なぜ、このようなことになるかと言うと、これは銀行独自の「減点方式の文化」によるものです。銀行での出世は加点法ではなく減点法だと良く言われます。つまり、加点されるような前例のないことにチャレンジする意欲的な銀行員よりも、減点されるような行動を限界まで極小化する慎重な銀行員の方が出世していくというわけです。
メガバンクに「ナイストライ」は存在しない
では、この僕がカラーで刷り出してしまった行動はどう評価されるでしょうか。スタートアップだったら「カラーで刷り出してしまったことはしょうがない、その分見やすくなるし次回から気をつけよう!という前向きな発想で済まされるかもしれないですが、銀行だったら、カラーで刷り出したことを小一時間怒られる(=減点される)だけでなく、先輩からしたら指示が不明確だったということでとばっちりを受けるリスクもあります。メガバンクに「ナイストライ」は存在しないのです。
そうすると、先輩が取るべき行動は、白黒で印刷し直してカラー印刷したこと自体を隠蔽することが最善手になります。こうすれば、僕も先輩も減点されることがなくなります。このような行動原理が銀行における独自のSDGsルールを形成しているのです。
(本記事は『雑用は上司の隣でやりなさい』の著者による書き下ろし原稿です)