そんな中、国家事業として始まった「Go To トラベル」は予算総額1兆3500億円のうち5600億円分が未使用だったために、コロナ禍後の全国旅行支援でこれを使い切ることに注力することになった。しかし、コロナ禍によって傷んだ産業は観光と飲食だけではない。ブライダル産業もその1つで、式場だけでなく、宝飾品・贈答品・花などへの波及効果は大きい。

 また、引っ越し(家の住み替え)においては家具・家電・車などの同時購入効果も大きい。旅行や飲食のように一過性で消費するだけのものよりも、人生と生活を変えるライフイベントである結婚の方が、その後に続く効果ははるかに大きい。であれば、結婚する夫婦に国を挙げて「お祝い金」を配布するのも効果的な政策だと私は考えている。この政策を、より具体化してみよう。

コロナ禍で失われた結婚需要を
喚起すれば出生件数は大幅アップ

 コロナ禍前3年(2017~19年)の年平均婚姻件数は59万7480組、2020~22年は51万0525組なので、仮にこの差分である8万6955組が結婚すると、出生件数は13万人(=8万6955[婚姻件数]×1.5[出産件数/婚姻件数])増える計算になる。2022年の出生人口が77万人なので、90万人が視野に入る。

 こうした潜在的な結婚需要を喚起するために、初婚で29歳以下の女性には一律80万円、同じく30~34歳以下には40万円を支給する制度を作ったらどうだろうか。年齢で差をつけるのは駆け込みが起こるからだ。

 以前は、20代のうちに結婚したい女性が非常に多かった。年齢を意識させることで、結婚は前倒しされやすくなる。この制度の財源を見積もると、2880億円になる。90万人の出生人口で割ると、赤ちゃん1人当たり32万円の支援に相当し、純増した13万人の出生人口で割ると、222万円になる。検討されている異次元の少子化対策をはるかに上回るパフォーマンスを見せると考えている。

 これは、結婚に金銭的なインセンティブを付けることは、出産する夫婦への支援と同じことだという仮説に準拠している。これを悪用して出産なき結婚を一時的にする人が出たとしても、目をつぶってもいいのではないか。