つまり、少子化問題の実態を捉えるために出産適齢期の人にアンケートを取ったところで、それは頭で冷静に想像した際の話にすぎす、現実はそうなっていないということだ。ひとたび産んだら、「子はかすがい」という言葉通り、親は何とかして立派に育てようとしているのが現実ということになる。

 この傾向は都市部でも同じだ。「出生件数÷前年の婚姻件数」の直近20年平均は、東京都1.23、1都3県(首都圏)1.38で変わっていない。全国と比較して数値は落ちるが、これもほぼ横ばいで近年減っているわけではない。

都市部への若者流入が少子化の原因
という言説の「まやかし」

「都市部に若者が集まることが少子化の原因」という主張があるが、そもそも都市部は就職先や求人数が多いから若者が集まるので、これを止めることは職業選択の自由の観点からもできない。また、先ほどの女性の大学進学率が都市部で高いことも出産人口に影響しているので、子育てしにくいとか、経済的な負担で産み控えをしているとは端的には言えない。

 1人の女性が一生のうちに産む子どもの数を示す合計特殊出生率が、2023年は1.20と過去最低になったというニュースがあったが、これは簡単に予測できた話になる。この出生率の低下原因は、単純に婚姻件数の減少が主因となる。婚姻件数が前年比9割になれば、翌年の出生率はほぼ9掛けになるからだ。

 50歳時の未婚者割合を生涯未婚率というが、2021年には女性が14.6%であるものの、今後は急上昇し、25%を目指す展開が予想されている。少子化対策の本丸はこの未婚率の上昇を抑えることに尽きる。日本全国どこでも、男女のマッチングを盛んにする仕組みやインセンティブに注力した方がいい。

 新型コロナ禍では、自粛要請で結婚式を挙げられない人が続出した。結婚式ができないことで、婚姻件数は激減した。私たちの生活や人生は思わぬパンデミックによってこの2年以上翻弄されてしまった。この失われた2年は、短い出産適齢期間においては深刻な長さである。