女性の出産適齢期が長くない中で、コロナ禍によって翻弄されたこの2年を取り戻すために時間的余裕はなく、今すぐにこうした政策を行わなければならない。本来、コロナ禍の結婚で産まれてきたであろう子どもが産まれないのは、産まれてきた我が子を亡くすことと同じことだと、私は考えているからだ。

通り一遍の子育て支援は
人間の「本能」を軽んじている

「安易な結婚支援で離婚が増え、シングルマザーやシングルファーザーが増える」という反論に対しては、事前に回答しておきたい。

 日本全国の過去20年平均の離婚率(=離婚件数÷婚姻件数)は35.7%で、これもほぼ横ばいで推移している。1都3県では32.1%、東京都では28.7%と、都市部で下がる傾向にある。離婚率は晩婚化が進むほど下がる傾向にある。「若気の至り」という言葉がある通り、若くして結婚すると離婚しやすいのだ。地方の若年層で見た離婚率は高いことから、若者が多く集まる都市部ではすでに独身者の年齢層は高く、慎重に相手を選んでいる結果と考えられる。

「1組の結婚で生まれる子どもの数×離婚率」、つまり片親になる子どもの数は、全国では0.54人、首都圏では0.44人、東京都では0.35人である。この結果から、都市部ほど必要以上に慎重に考えずに結婚を推奨してもいいと考える。

 出産後の子育て支援に向かいがちな少子化対策は、頭でっかちで人間の「本能」を軽んじている。進化論のダーウィンは「生き残る種というのは最も強いものでも最も知性があるものでもなく、変化に対応できたものである」と言っている。私たち人間も動物であり、ご多分に漏れずに進化論の枠組みの中にいる。

 後先を考えずに、人を愛し、子どもを愛して努力するであろうことを信じてもいいと、私は思っている。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖有人)