そういうわけなので、新NISAで株を買ったら、値動きに惑わされずひたすら持ち続けなさい、積み立てていきなさい――というのが、お金のマネジメントの専門家が投資初心者に今年よく行っているガイダンスである。これは確かに正しい(正確には「勝率の高い方法論」である)。

 しかし、「投資にリスクはつきもの」といった、投資を行う上で最も持っておきたい心構えなどについて、十分に説明がなされていると言い難い記事や動画が散見されるのも事実で、個人を無責任に投資へ誘おうとする言説は、はたから見ていてちょっと危なっかしい印象を受けることがあった。

 これは、騙し討ちのようなものだったが、とりわけ現金と銀行預金のみが好きな日本人を投資の世界に駆り出すには効果的なアプローチだったとは思う。投資アレルギーのある日本人に「手堅いけどわずかながらリスクもあります」などと事実をそのまま伝えれば、やはり多くの人は伸ばしかけた食指を引っ込めるだろう。そこでリスクについてはぼんやりと伝え、「儲かります」が強めに伝えられたわけである。

個人投資家が増えるのはいいが
次に踏むべき段階は「リスク」を学ぶこと

 日本国内で個人投資家を増やして経済を活性化させようという政府の目論見は評価できるが、個人投資家が実際マーケットに参入してきて、次に「きちんとリスクについて学んでもらいましょう」という段階を踏んでおきたい。

 今回の暴落は、その学習機会として利用されるのが好ましいのではあるまいか。リスクを認識した上で理性的に臨むことこそが、投資を失敗させないキモだからである。