前社長解任騒動に揺れたゼネコン準大手、三井住友建設のガバナンス不全が続いている。前社長の解任を目指した前会長らによる“クーデター”は不発に終わったものの、同社は4月下旬に前社長に反旗を翻した一部の社外取締役の続投を発表した。連載『三井住友建設 クーデターの深層』の#5では、2月末の前社長退任発表後から続く激しい暗闘の内幕に加え、次期経営体制が抱える問題点についても明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
三井住友建設が次期役員体制固める
会長退任でクーデター完遂はならず
「人事異動に関するお知らせ」。ゼネコン準大手の三井住友建設は4月26日、自社のホームページでそう題したリリースを開示した。中身は取締役と監査役の進退を踏まえた次期経営体制を示すものである。
本連載#1『【スクープ】三井住友建設で社長解任の“クーデター”勃発!反社長派の取締役が三井住友銀に出した「連判状」の全容』で既報の通り、同社では今年に入り、取締役が主要取引行の三井住友銀行に同行出身で当時社長だった近藤重敏氏の解任を訴える「連判状」を提出する“クーデター”が勃発した。
三井住友建は2月末にトップ人事を開示した。4月1日付で代表取締役社長だった近藤重敏氏が退任し、代表取締役専務執行役員だった柴田敏雄氏が社長に昇格するというものだ。
一見、取締役らによるクーデターは成功裏に終わったようでもあるが、実際は異なる。開示には、近藤氏の退任だけでなく、会長だった君島章兒氏の退任も盛り込まれていたのだ。君島氏こそ、4人の社外取締役と合わせた「五人組」として、近藤氏の解任を画策していた張本人である。
もともと五人組が描いていた計画は崩れたといえる。近藤氏との“相打ち”となる形で君島氏も退任することになったためだ。つまり、クーデターは完遂とはいかなかったのである。
ただし、2月末の前会長と前社長の退任発表後も同社はクーデターの余波に揺れた。テーマとなったのが、取締役人事である。最大の焦点が、クーデターを決行した社外取らの去就である。そして、約2カ月にわたる水面下での攻防を経て、同社は冒頭で紹介した役員人事を決定し、公表するに至った。
次ページでは、前会長と前社長が相打ちになった経緯に加え、その後に社内のみならず金融機関や投資ファンドなども巻き込んで繰り広げられた暗闘の内幕を明らかにする。激しい水面下の攻防で起きた“報復人事”の中身とは。また、今回の取締役人事を基に同社がはらむガバナンス上の問題点についても指摘する。