「謝罪文を提出しろ!」金融機関の窓口で迷惑客が難癖…カスハラを乗り切る「2段階の対処」とは?写真はイメージです Photo:PIXTA
*本記事はきんざいOnlineからの転載です。

「カスタマーハラスメント」(カスハラ)とは、顧客から企業に対し、自分だけを特別扱いするよう求めたり、難癖をつけたりする等の迷惑行為を指す。近年、カスハラへの対策が、企業経営における緊喫の課題として認識されるようになっており、組織として毅然と対峙する方針を打ち出す企業が増加傾向にある。不特定多数の顧客に対しサービスを提供している金融機関では、カスハラへの対策が必要不可欠である。本稿では、カスハラ対応に役立つ心得や、そのテクニックを解説したい。

カスハラの発生は「組織的な課題」

 近年、カスハラ対策を打ち出す企業が増えている背景として、政府や自治体でカスハラに関する法令や条例の制定に向けた検討が進んでいることが挙げられる。政府が今年6月に公表した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)では、カスハラを含む職場のハラスメント行為に対して「法的措置も視野に入れ、対策を強化する」ことが盛り込まれた。また東京都は現在、カスハラ防止条例の制定を検討している。

 現時点において、カスハラに法律上の明確な定義はない。しかし、厚生労働省が2022年に制定した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラを「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義している。「内容」と「手段・態様」の二つの観点における合理性の有無が、カスハラに該当するかどうかのポイントである。

 サービスの提供相手を、信頼関係を築ける特定少数の顧客に限定する場合は、カスハラを受けることは少ない。他方、不特定多数の顧客に対しサービスを提供している金融機関では、顧客にさまざまな人が紛れ込むのは仕方がない。カスハラの発生は多大な利潤を得ることとのバーターであり、ビジネスの性質上、不可避な「組織的な課題」といえる。