心配性な自分を治したい…元自衛隊メンタル教官のアドバイスが的確すぎた写真はイメージです Photo:PIXTA

「不安」は原始の時代から人類に備わる感情であり、生存と成長には欠かせないものだった。しかし、不安という感情に振り回されると心身はすり減る一方だ。不安をうまく飼いならすために、そのメカニズムを理解することから始めよう。本稿は、下園壮太『不安がりやさんの頭のいいゆるみ方 ――自衛隊メンタル教官がすすめるプチ楽観主義』(さくら舎)の一部を抜粋・編集したものです。

人は「不安」がないと
すぐに死んでしまう

※文中に登場する不安のレベルについて
■不安の第1段階=通常警戒レベル
■不安の第2段階=不安が頭から離れず夜も眠れない
■不安の第3段階=ネガティブ思考がどんどん拡大
図表1:不安の3段階・適正不安と過剰不安私たちはみんな、不安の3段階のどこかにいます。図7は、不安レベル2(=楽観的)、不安レベル5(=多数派)、不安レベル7(=悲観的)の各層について、不安に対する反応を示しています。現代人の多くは、リスクに対して必要以上に反応する過剰不安に陥りやすくなっています(図8)。
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 不安は原始人が自分の身の安全を確保するために、将来をシミュレーションし危険を避けるための感情であり、私たちの生存、成長には欠かせない感情です。

 試しに、「不安がなかったら……」と考えてみましょう。

 私たちは将来のために勉強したり貯金したりすることがなくなるでしょう。明日のプレゼンテーションもろくに準備しないし、災害にも準備しない。将来の目標に向かって成長するパワーも衰えるでしょう。

 このように本来は人にとって非常に重要な感情なのですが、一方で原始人的な命がけ反応をしてしまうので、どうしてもオーバースペックとなりがちです。

 明日のプレゼンは自分のキャリアのためには重要かもしれませんが、仮に失敗したとしても命を取られることはありません。しかし不安は、まさに命を取られるかもしれないという必死さで明日のプレゼンのことを恐れ、シミュレーションし、夜も寝かせないのです。苦しいし、消耗もします。

 このデメリット部分が強調されて、「不安は見ないようにする」「抑える」「考え方を変えて対処する」などの対処法が重視されがちですが、その過程の中で、不安の本来のメリットも忘れられてしまいます。

 その結果、私たちは重要な思い込み(勘違い)をしがちです。

 それは「不安を感じてはいけない」「不安はゼロにするべき」「不安を感じることは恥ずかしいこと」だという認識です。

 不安がないと人間はすぐに死んでしまうでしょう。だとすれば、たとえいまあなたが不安への対応に困っていたとしても、そして不安をゼロにしたくても、絶対ゼロにはならないのです。

不安は受け止めたうえで
ボリューム調整すればOK

 幸運にも不安の力が弱い第1段階なら、理性の力で不安の思考をゆるめて行動に影響がない状態にすることができます。

 かといって、不安がなくていいわけではないのです。

 さらに第2~第3段階になったときに必死に不安をゼロにしよう、なくそうとする努力をしてしまうと、巨大風車に挑むドン・キホーテのように、いたずらにエネルギーを消耗し自信を失う原因になってしまうのです。