不安がりを少しでも改善しようとするのはよいのですが、「どこまでできるかなあ」というほどほどの期待値を持つべきです。

 カウンセラーあるいはメンタルトレーナーとして多くの人を見ていると、個人差だけでなく性差も大きいと感じています。脳科学などのエビデンスとは異なる意見かもしれませんが、私の体験からの結論では、単純に、女性のほうが男性より不安がりやの方が多いようです。

 これも原始人的に考えると納得できます。

 原始的環境において、女性は男性に比べ体も小さく、身ごもり、子どもを育てなければならないので、自分の力だけで、さまざまな危険に対応するのは難しかった。その分、必死にシミュレーションし危険を避け、それだけでなく周囲の人に守ってもらえるようなコミュニケーションをとって、初めて生きていけたのでしょう。そのようにセットされているのです。

不安の軽減のためにはまず
疲労や刺激のコントロール

 このような性差、個人差はあるものの、刺激や疲労によって生じる不安の2倍、3倍モードの概念を適用すれば、「個人差は、あっても1.5倍程度」のものだと感じています。

※文中に登場する疲労の3段階について
■疲労の第1段階=通常疲労レベル
■疲労の第2段階=疲労が蓄積され不安が2倍に
■疲労の第3段階=疲労も不安も3倍モード
図表3:不安とリンクする疲労の3段階同書より転載
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 つまり、不安を感じにくい人が、ある事象に対し10段階でレベル2の不安を感じているとしましょう。同じ条件で、不安がりやさんは1.5倍の3の不安を感じるでしょう。

 しかし、もし不安を感じない人が、疲労をためて第2段階になったとしたら、2倍モードなので、同じことでレベル4(レベル2×2)の不安を感じてしまいます。第3段階ならレベル6の不安になってしまうということです。

 一方、不安がりやさんが第2~第3段階になったならレベル6(レベル3×2)、レベル9の不安を感じている。これはかなりつらいことです。

 そんな不安がりやで困っている人の場合、どうしても「自己改革」「忘れてしまう」の対処法で、自分の感性を鍛えようとか考え方を変えようとか、あるいは我慢力を鍛えようなどとしてしまいます。今だけでなく、将来のためにも変わりたいという思いからです。

 しかし、それをやってもうまくいかないことは説明したとおりです。実際には、まずは疲労や刺激のコントロールから始めることが、いまも、その後を見ても効果的なのです。