今のテレビバラエティの基礎を作った萩本さん。観覧のお客さんの後ろにカメラを置き、スタジオの“臨場感”をお茶の間に伝えたのも萩本さんの発明だとか。

「現場の活気を伝える」という、僕が大切にしてきたテレビとの向き合い方は、もしかしたら知らぬ間に、欽ちゃんのDNAを受け継いでいたのかもしれません。なぜなら僕も、大将の教えを受けた“幻の欽ちゃんファミリー”ですから。

萩本欽一が認めてくれた
中山の密かなこだわり

 少し前、『シューイチ』の取材で『人は話し方が9割』の著者・永松茂久さんにお話を伺った際、やみくもに他人を褒めるより「呟くように褒める方が伝わる」と聞いて、30年来の友達・見栄晴のことを思い出しました。

 彼は長い芸能生活で“育ての親”萩本欽一さんから、2度しか褒められたことがないそうです。

 最初は『欽ちゃんのどこまでやるの!』(テレビ朝日系)の最終回の収録後。ボソッと「お前、うまくなったな」と言われ、もう、天に昇るほど嬉しかったとか。

 オーディションで「1日でトランペットを吹く」という難題をクリアするも、オーディション自体が白紙になってしまった“幻の欽ちゃんファミリー”である僕も、実は、萩本さんから、生涯忘れられない褒め言葉を貰っていて……。

 あれは、萩本さんが『DAISUKI!』のゲストに来てくれた時のこと。当時の僕は、20代後半でした。レギュラーも増え、皆さんに知ってもらえるようになった一方、「テレビで遊んでいるだけ」など、厳しい声を受ける機会も増えていました。

 おそらく萩本さんも、「この青年は、なぜよくテレビに出ているのか?」と不思議だったのかもしれません。ロケバスで突然、「俺、中山クンの何が凄いのか、よーく考えてみたら、やっと分かったよ」と言われたんです。「な、何が凄いんでしょう?」と僕が恐る恐る聞くと、萩本さんから意外な言葉が飛び出します。

「俺はスタジオでコントをするから、なるべくセットは目立たないモノにするの。目立つと、観ている人が後ろに気を取られちゃうからね。でも、中山クンは背景に負けない。どんな場所でロケをしても、視聴者は君を見ちゃうんだ。たとえ富士山の前にいても、みんな君を見るよ」と……。

 いや、いくら僕でも、この言葉を聞いて、「俺は富士山より凄い」と思うほど、おめでたくはない(笑)。嬉しかったのは、萩本さんが僕の「密かなこだわり」を褒めてくれたから、でした。