土曜日なので事務所は休みにしておりますが、顧客対応のため、若い弁護士たちが事務所に出ておりました。そのため、私も事務所に様子を見に行こうとしました。私は昼前に出社して、彼らをランチにでも誘おうと思っていました。
しかし、妻から事務所に出ることを止められました。「若い先生たちに任せるんだったら、全部任せたら」とのことでした。
任せられない弁護士社長に
妻が放った“ド正論”
妻に言わせると、「従業員の立場からしたら、たまには自由にやらせてもらったほうがやりがいが出るし、代表が来て細かいことを言われるより、困った時にいてくれればよい。ご飯もたまにはお金だけ置いていってくれたほうがいい」とのことでした。
私は、経営者として、今までにないくらい孤独を感じました。
しかし、「人に任せる」という意味では、考え方を根本的に変える機会であると前向きにとらえ、成長するチャンスであると考えました。
さらにその年の4月に、東京で親しくしている熊本の弁護士Aさんと会話をしました。その時のやり取りは以下のようなものでした。
Aさん「急いで島根に帰らなくていいんですか?」
井上晴夫 著
私「今夜は泊りますよ。最近わざと事務所を空けるようにしているんです」
Aさん「事務所に居場所がない?」
私「いや、そうじゃなくて、私がいると、若い弁護士たちが私を頼って、自分の頭で考えないんです。ちゃんと見ているので、困った時に登場するようにしているんです。スマホがあればどこでも仕事ができますしね」
Aさん「井上先生はもう社長脳になっておられますね」
今から考えると、この頃の数カ月が、私の脳を経営者の脳に転換してくれる大事な期間だったのだと思います。