「インプット」にご褒美が与えられた場合、子どもにとって、何をすべきかは明確です。本を読み、宿題を終えればよいわけです。一方、「アウトプット」にご褒美が与えられた場合、何をすべきか、具体的な方法は示されていません。

 ご褒美は欲しいし、やる気もある。しかし、どうすれば学力を上げられるのかが、彼ら自身にわからないのです。

 ここから得られる極めて重要な教訓は、ご褒美は、「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべきだということです。

アウトプットへのご褒美は
指導者とセットで意味を持つ

 フライヤー教授が、実験の後に行ったアンケート調査は、アウトプットにご褒美を与えることがうまくいかなかった理由をはっきりと示していました。

 アウトプットにご褒美を与えられた子どもたちは「今後もっとたくさんのご褒美を得るためには何をしたらよいと思うか」という問いに対し、ほとんど全員が「しっかり問題文を読む」「解答を見直す」などのように、テストを受ける際のテクニックについての答えに終始していたのです。

「わからないところを先生に質問する」「授業をしっかり聞く」などのように、本質的な学力の改善に結びつく方法にまでは、まったく考えが及んでいなかったことがわかります。

 ここで、「だとすれば、その方法を教えてあげる人がいるとよいのでは」という仮説がおのずと生まれてきます。この仮説については、次のような研究があります。

 ニューヨーク市立大学のロドリゲス准教授は、子どもの学習の面倒をみる指導者や先輩がいる場合には、アウトプットにご褒美を与えても学力が改善することを発見しました。指導者や先輩が、目標のためにどのように努力すべきかについて具体的な道筋を示してくれたからです。

 アウトプットにご褒美を与える場合には、どうすれば成績を上げられるのかという方法を教え、導いてくれる人が必要であることがわかります。