テック企業は儲けているのに
従業員を抱えようとしない

 一方、テック企業にはほとんど組合がなく、インターネット大手で組合のある企業は一社もない。

 重要なのは、テックジャイアントが巨額の収益を上げている割に雇用者数がきわめて少ない点である。アルファベット(=グーグル)やフェイスブックなどのIT企業は、従業員一人当たりの市場価値がGM、ホーム・デポ、クローガーなどの300倍にもなる(天然資源を原資とするエネルギー部門だけは、収益に比して雇用者数が多い)。さらにIT企業とそこにサービスを提供する専門請負業者は、低賃金で働く何千人もの外国人労働者に大きく依存しており、そのなかには年季奉公に近い者もいる。

 テックオリガルヒは、将来のヴィジョンを示す首尾一貫した政治綱領を策定しているわけではない。しかし明らかなのは、アマゾン、グーグル、フェイスブック、アップル、マイクロソフトといった企業のITエリートたちがいくつかのアイデアを共有し、それらが共通のアジェンダにつながっているということである。

 発展しつつあるテクノクラートの世界観には、特権的な上層部の仲間内(の出世や昇進)は別にして、社会的上昇という発想が入り込む余地はほとんどない。ここから予想されるのは、中流・労働者階級の人びとが社会の隅に追いやられるということである。テックオリガルヒは、マーク・ザッカーバーグの言う「有意義なコミュニティ」を構築する取り組みについては語るが、社会的上昇について口にすることはめったにない。