国家福祉は充実させるべきと考えるが
自らの身銭を切るつもりは毛頭ない

 技術系ジャーナリストのグレゴリー・フェレンスタインは、デジタル企業の創業者147人に取材した結果、彼らは概ね労働者や消費者が自分で会社を興すとか、家を持つなどして独立するとは考えていないようだと述べている。

 取材に答えた創業者らの多くは、「少数の非常に才能豊かな人や独創的な人が経済的な富のますます多くの部分を生み出すようになり、その他の人びとは単発・短期の仕事を請け負う“ギグワーク”で収入を得つつ、政府の援助を受けながら生活していくのだろう」と考えているようである。

 フェレンスタインによると、テック業界の巨頭たちの多くは、過去のビジネスリーダーとは対照的に、福祉国家の拡充を基本的に支持しているという。マーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスク、トラヴィス・カラニック(ウーバー元CEO)、サム・アルトマン(Yコンビネーター創業者)はいずれも労働者の年間所得保障案に賛成している。経済的に不安定で厳しい状況にある労働者が生活苦を理由に暴動を起こす不安を少しでも解消したいという思いもあってのことである。

 とはいえ、1930年代の「ペントハウス・ボリシェヴィキ」(編集部注/ロシア生まれのアメリカ人ジャーナリストであるユージーン・ライオンズの言葉。1929年10月に起こったアメリカ大恐慌下で、資本主義への懐疑が広がり、共産主義シンパの知識人や金持ちは彼らだけの排他的な社交パーティーに明け暮れていた)とは異なり、自分たちの財産が削り取られることを容認するつもりなどさらさらない。その代わり、賃金保証、医療サービス、大学無償化、住宅支援、ギグワーカー(雇用主から福利厚生の対象外として扱われている労働者)への補助金など、それらに充てる費用の多くは中産階級が負担することになりそうだ。