腎臓が一躍注目を集めたのは、2024年3月末に報じられた、紅麹(べにこうじ)サプリメントの薬害問題です。サプリメントの摂取により、命にも関わるような腎障害が起きているケースが多数あることが判明したのです。

 私たちの体には毎日いろいろなものが取り込まれますが、腎臓はそれに柔軟に対応し、体内環境が常に一定のバランスに保たれるように調整してくれています。

 一方、腎機能が低下すると、老廃物や毒素は処理しきれずに体内にたまってしまうこととなり、全身に悪影響が及びます。

 また、腎臓は、一度機能が壊れてしまったら、今の医学では元通りに治すことはできません。腎機能が著しく低下してしまったら、人工透析や腎移植を余儀なくされてしまいます。

 腎臓はまさに「縁の下の力持ち」として、私たちの体を支えてくれているのです。

腎臓と肝臓が、体に不要なものを処理している

 健康のために薬やサプリメントを服用したはずなのに、なぜ、腎機に限って機能障害が起きてしまうのか――そこには代謝と排泄経路が関わっています。

 代謝とは、体内で行われる化学反応のこと。私たちは摂取した栄養素を合成・分解することで、エネルギーや生体物質などをつくり出しています。

 薬やサプリメントには薬効がありますが、体内でその効果を発揮して、すぐにお役目終了であとは何もなくなる、ということではありません。基本的に「体内に入ったものは、体に取り込まれたもの以外は、体外に出る」ことになります。つまり、薬やサプリメントの効果としてはたらいたもの以外の物質は、排泄されることになるのです。

 その経路は2つに分けられます。1つは肝代謝といって、肝臓で代謝されて腎臓や消化管から排泄されるルートで、比較的脂溶性の高い薬物はこのルートです。もう1つは腎排泄といって、水溶性の高い薬物で、多くは代謝されずに直接腎臓から排泄されるルートです。

 薬やサプリメントを服用する人は、健康のために同じ薬やサプリメントをほぼ毎日服用し続けています。でも、微量であってもコンスタントに飲み続けることによって、同じ排泄経路を刺激し続けることにもなるのです。このプロセスにおいて、細胞はストレスを受けます。

抗生剤の効き目を左右する2つのルート

 わかりやすい例として、抗生剤で考えてみましょう。

 抗生剤は、感染症などの治療に効果を発揮します。抗生剤を処方するとき、医師は肝臓のルートで排泄されるか、腎臓のルートで排泄されるかで分けて考えています。