「お宅の屋根、壊れてますよ…」突然の訪問者に絶対ドアを開けてはいけないワケ台風で激しい暴風雨があった翌日、屋根瓦がずれていると息を切らして急いで走ってきた建築現場系の作業着を着た青年。偶然を装って訪問するのが詐欺の常套手段だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

近年、住宅修理に関する悪質な詐欺が横行しているのをご存じだろうか。修理詐欺とは、いきなり訪問して強引に契約を結び、後から法外な金額を請求するというものだ。その巧妙な実態と防止策について、弁護士の福永活也氏に解説してもらった。(清談社 吉岡 暁)

「屋根瓦がずれているのが見えて…」
偶然を装って訪問するのが常套手段

「台風で激しい暴風雨があった翌日のことでした。ピンポンが鳴ったのでインターホンを見ると、建築現場系の作業着を着た青年が立っていて『近くの工事現場で作業をしている者です。お宅の屋根瓦がずれているのが見えたので来ました!今すぐ直さないと、瓦が落ちて危険ですよ!』とすごい剣幕で言うんです。普段だったら用心してドアは開けないのですが、その時は相手が息を切らして急いで走ってきたような様子だったので、すっかり騙されてしまって……」

 そうため息交じりに話すのは、昔ながらの分厚い屋根瓦が特徴の家に住む宮田佳子さん(仮名・55歳)。穏やかな平日の午後、突如現れた業者の言葉に焦った宮田さんは、思わずドアを開けてしまったという。

「屋根なんて普段チェックもしていない場所ですし、本職の方がそう言うなら本当だろうと思いました。ただ『屋根のどの辺りですか?』と聞くと『しっかり確認したいので、ちょっと屋根に上がらせてもらってもいいですか』とはっきりしたことは言わない。『この近くの会社の方ですか?』と聞いても『はい』と言うだけで、名乗りもしないんです」

 今すぐ直すべきの一点張りで、強引に点検を進めようとする相手に宮田さんは違和感を持った。