卵子提供と里親制度の問題点
先ほど、50歳を超えての妊娠は卵子提供の可能性が高いという話をしました。
最近は著名人が卵子提供を受けて出産したケースも話題になっています。衆議院議員の野田聖子さんはアメリカで卵子提供を受け、夫の精子を入れて受精卵をつくり、自分の子宮に戻しました。
なぜ彼女は自分の子宮にこだわったのでしょうか。
自分の卵子でなければ遺伝的に自分の子ではないので、通常、子宮摘出後等、子宮自体に問題があるケースで選択肢となる代理母という方法も考えられます。ですが日本では、いまだに「誰が出産したか」が重要で、出産した人が戸籍上の母親になります。
このような状況であるために、彼女は自分の子宮に受精卵を戻したのかもしれません。
日本では卵子提供の法律が未整備なこともあり、最近ではアメリカなどでアジア系の人から卵子や精子の提供を受け、日本の病院で出産する女性が増えてきています。
しかし現在、日本の病院には、卵子提供による妊娠では、妊娠高血圧症候群の発症など妊娠中の経過や、癒着胎盤など分娩時のリスクが高いとして、卵子提供を受けて妊娠した女性を受け入れないところがまだ多くあります。
今後、そうした人が増えた場合にどう対処していくか、受け入れ側の体制を整えていかなければならないという問題があります。
卵子提供で母親になるという方法以外に、もう1つ里親制度で里子をもらうという選択肢があります。しかし、ここにも問題点があります。
里親になっての養子縁組を希望する場合、一般的に児童相談所では、里親と里子の年齢差が40歳以内であることが望ましいと定めています。しかし、不妊治療を何年かやってもうまくいかず、里親になろうかなと考える人は自然と45歳を超えることが多くなります。その時点で3歳とか4歳の子はもらえないのです。こうした理由で、里親を考えているのに養子をとれなくて困っている人がいるのです。
40歳以内という条件は社会的、経済的な理由ということのようですが、今の時代に合っているとはいえないので、基準の見直しが必要といえるでしょう。
次回は5月16日更新予定です。
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