実子介護の
難しさの理由とは

書影『義父母の介護』(新潮社)『義父母の介護』(新潮社)
村井理子 著

 しかし、義母の認知症の進行が待ったなしで進む今、介護の主役は私から夫に、徐々にシフトしてきている。実の子にしか判断できない場面が増えてきたのがその理由だ。例えば、ショートステイを利用するか、しないかという判断は、私には荷が重い。デイサービスとショートステイの間には、大きな気持ちの差がある。ケアマネの助言もあり、夫は満を持して両親の介護に参加することになった。

 夫が介護の現場に登場するのに時間がかかった理由には、実子の介護の難しさがある。親の衰えた姿を見ることの辛さや悲しさが、苛立ちとなって親にぶつけられてしまう場面は、わが家のケースでも多かった。

 私自身も、実の母が膵臓癌の発症とともに認知症になったとき、それを受け止めることができなかった経験があるので、その苛立ちやどうにもならなさは理解できる。しかし、介護従事者の支援を得て、どうにか2人暮らしを維持している両親と向き合うことには、夫にとって辛いことだけではなく、喜びもあるはずだと私は考えている。後悔するよりは、今、全力でぶつかったほうがいい。