ノンフィクションライター・甚野博則氏による『ルポ 超高級老人ホーム』が発売直後から注目を集めている。入居金が数億を超える「終の棲家」を取材し、富裕層の聖域に踏み込んだ渾身の一冊だ。本記事では、発売前から話題となっている本書の出版を記念して、内容の一部を抜粋し再編集してお届けする。
「真の富裕層」は
50代から部屋をキープ
東京・世田谷区の一等地にそびえる老舗の超高級老人ホーム「サクラビア成城」。社会の成功者たちは、どんな経緯で施設への入居を決めるのだろうか。
サクラビア成城の運営会社で取締役を務める松平健介氏(仮名)に話を聞いた。
「経営者の方々は、50代、60代の頃に、終末期のことまで考えておられます。経営されている会社をお子さんに譲られたことを契機に入居される方もいらっしゃいます」
彼らは将来を見越し、保証金の100万円を預けて部屋をキープしているという。まさに人生の上がりの場が、サクラビア成城ということなのだろう。
親の代から「二世代入居」も
「親御さんに会いにお子様たちも通われてきます。その際に私どものサービスを体感されて、親御さんが亡くなられた後ここに入りたいと思っていただき、ご入居されるケースもあります」
松平氏の話によると、親の代から入居している超富裕層もいるというから驚きだ。まさしく「真の富裕層」といったところだろう。
「今までは、見学に来られて待機メンバーになられた方を中心に、ご入居の順番待ちをしていただいておりました。このため、いわゆる一見でご入居をご希望される方には入居していただけませんでした」
しかしながら松平氏の話によると、現在は新型コロナの影響で見学会の開催ができず、わずかに空室があるようだ。このため、「今が一見の方が入居できるチャンスなんです」とも話していた。
ただし、スーパーの安売りとは違い、約2億円もする部屋を衝動買いのように即時契約できる者はそう多くはない。
若いうちから安くない保証金を積んでまで部屋をキープするほどの魅力とは一体何か。そして、どんな人物がサクラビアへの入居を許されるのか、俄然興味が湧いた。