SNSのせいで、自分の文章は伝わっていないことに
気づいてしまった

佐々木圭一(ささき・けいいち) コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国 の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6カ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。写真/賀地マコト

本田 昔は相手に何かを伝えるにしても、電話や直接会って言わない限り、すぐには返事が返ってきませんでした。反応がわかりづらかったからこそ、ただ自己満足的に何かを書いたり、伝えたりしていた人も多かったでしょうね。

そもそも自分の伝え方がよかったのかどうか、判断する方法がなかった。デートに誘ったり、人に何かを頼んだり、仕事で営業をしたり、そういう結果が◯か×かで出る場合は、まだいい。それでも、本当に伝え方がよかったから相手がOKしてくれたのかどうかまでは、わからないじゃないですか。

 でも今は、ツイッターならリツイートされたり、フェイスブックならいいね!がついたり、自分がパッと放った情報が、どんなリアクションを受けるか、その場でわかってしまう。

佐々木 情熱を込めて書いたはずなのに、いいね!の数が少ないと、「あれ?」ってがっかりした気持ちになりますよね。

本田 それで、多くの人が「自分の文章って、実は伝わってなかったんだ……」ということに気づいてしまった。今は、伝え方について毎日細かく評価される時代になってきていると思うんです。

佐々木 見方によっては、ちょっと怖い部分もありますよね。この話題には、みんなが興味持ってくれた、もしくは持ってくれなかった、じゃあ今回はどうだろう?そういう意識で発信できる人にとっては、やりがいがある時代だと思うんですけど……。しかも、文章が上手ならいいね!が増えるかといえば、そうでもないというのが、またややこしい。

本田直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を超えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イースト・プレス)などがある。著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。

本田 デイリーにやり取りする情報が増えたことで、「伝え方」のニーズが高まっているのは間違いない。でも、ここまで僕が話していたのは、主に書くという分野について。みんながLINEをするようになったからといって、話す量が劇的に減っているのかといえば、そんなことは全然ないんですよね。

佐々木 会話といえば、読者の方から、すごく面白いエピソードをいただいたんです。息子に「歯磨きをしなさい」っていくら言っても聞かない。でも、この本を読んで、「口の中のばい菌をやっつけに行こう」って言うようにしたら、すごくきちんと磨くようになったって。そういう話を聞くと、すごくうれしいですね。

本田 親と子ども、夫婦間、上司と部下。そういう日常会話こそ、もしかするとより複雑になっているのかも、という気がします。歯磨きの話じゃないけれど、昔は「やれっていったらやれよ」みたいな論理でなんとかなっていたでしょう?

頭ごなしにバーッと言いさえすれば、みんなが従った。でも、今は「やれっていったらやれ」と言われても、「なんでですか?」となる時代。この間、女子柔道の監督が体罰で訴えられましたよね。それは、個人個人が自分の意志や考えを、きちんと表現するようになってきたからだと思うんです。

つまり、オーラルコミュニケーションにおいても、伝え方がヘタな人は通用しない時代になってきたということ。そういう時代だからこそ、「最近の若いやつは言うことを聞かない」と嘆くんじゃなくて、「伝え方が重要だ」ということを知るべきなんです。