「受験は親に相談するな!でも…大学受験で親が「関わるべき」たった2つの場面とは?【現役東大生が教える】『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第8回は、「大学受験における親の関わり方」を考える。

一世一代の大学受験
親はどこまで関わるべきか

 龍山高校に東大専門コース“東大専科”を誕生させた東大合格請負人・桜木建二は、2人の生徒に向かって驚くべき言葉を投げかける。

「受験は親には相談するな」「俺の言うことだけを聞け」

 その言葉に戸惑いながらも家に帰った天野晃一郎は、弟の裕太からも同じようなことを言われる。母親の言うことは「聞いてるフリしてハイハイ返事してるだけ」と。

「父親の経済力と母親の狂気」が合否を分けると言われたのは中学受験までだ。6年の時を経た大学受験に、保護者はどのように関わるべきなのだろうか。

 もちろん、親子関係は十人十色であり、各家庭によって特別な事情はあるだろう。

 だが私は、基本的には後述する2点を除いては親は静観すべきだと考えている。

 なぜならば、親が持っている受験への知識は、基本的に古いからだ。30年も昔の大学受験と今の大学受験は、方式や学校の難易度、浪人に対する考え方などが大きく異なる。それに比べて、学校や塾を通じて日々最新の情報に触れている受験生の方が、はるかに正確な情報を持っている。

 では、親が関与すべき2点とはなんだろうか。

 1点目は、お金である。4年生大学の場合、かかる学費の平均は国立大学で約242万円、私立大学で約469万円だ(文部科学省「2021年度学生納付金調査結果」「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」より)。受験料や通塾費用も合わせると、多くの受験生にとって自分で負担できる額ではない。

 受験を終えた今だからこそ言えるのは、親が説明なしにお金を出すのはよくない、ということだ。自分の成長のために、何にいくら使われているのかを子どもは自覚するべきだ。

 特に、多くの受験生はその間に18歳成人を迎える。あまりお金の苦労を自分ゴトとして認識してこなかった生徒達こそ、その実際を学ぶ機会となろう。

 2点目は、健康だ。体調を崩した時の拠り所は家庭の他にない。特に受験期となると、過度なストレスを抱えて食事や睡眠が疎かになる受験生が少なくない。実際に、私も食事の量が極端に少なくなった。体調は親子共同で管理するのが賢明だ。

大学入試は
「点数稼ぎのゲーム」ではない

漫画ドラゴン桜2 2巻P5『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 そして、1年前の受験生として声を大にして言いたいのは、大学受験は単に入試で点数をとるゲームではない、ということだ。この社会の中でどのような進路を選ぶべきか、その方向性を自分の責任で考えなければならない最初の試練であり、また最初のチャンスである。

「自分の力で掴み取った進路だ」と胸を張って言えるような結果で終わることが最善なのは言うまでもない。

「勉強の息抜き」という名を借りた現実逃避である放課後の雑談。「お前将来どうなるの?」という何気ない会話を2~3時間も語り合った私の友人は、現在、羨ましいくらいの好奇心とともにガーナで農業を学んでいる。受験生ならばその2~3時間を勉強に充てれば良かったのに……というのは安直だ。

 右往左往しながら、それでも手探りで自分の進路を見つけていく。

 親御さんにしてみれば、その道のりは不安定で心配することもあるだろう。どの大学を目指すのか、どの塾に通うのか、なんの講座をとるのか、1日何時間勉強するのか、気にしだしたらキリがない。

 私は初めて自転車に乗った時のことを思い出す。「支えているよ」と言いながら後ろで見守っていただけの父親。いつの間にか自分で漕げるようになっていた自転車。

 時には本人ですら気付かないくらい、そっと「見守る、でも何かあったら助ける」というポジションにいてもらうのが、実は一番ありがたかったりするのである。

漫画ドラゴン桜2 2巻P6『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 2巻P7『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク