泣いている女性写真はイメージです Photo:PIXTA

演劇、アニメ、ドラマ、スポーツなど、さまざまなエンタメが溢れる現代では、人は誰しも感動したことを他者に語りたがる。しかし、「泣ける」「考えさせられる」といったお決まりのワードを口にした途端、せっかくの感想もありふれたものになってしまう。書評家・三宅香帆氏が語る“自分だけ”の言葉で感想を述べることの意義とは?昨年出版と同時にSNSを中心に大きな話題をよんだ書籍のハンディ版『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(三宅香帆 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)より、一部抜粋・編集してお届けする。

人間はありのままの感想を
言葉にすることが難しい生き物

 ずばり!推しを語るときに一番大切なこと。

 結論から言ってしまいますが、それは「自分だけの感情」です。

――自分だけの感情?感じたままの、ありのままの感想を語るってこと?

 こんなふうに思われた人がいるかもしれませんが、それはちょっと違います。

 というのも、「自分だけの感想」とは、「他人や周囲が言っていることではなく、自分オリジナルの感想を言葉にすること」なんです。

 たとえば、創作にはオリジナリティが重要だと言う人がいます。これは本当にその通りで、自分の作品と同じ作品がもうあるなら、重複して世にだす意味はほとんどないんです。だって、既にありますからね。

 推しを語ることも同じです。誰かがつくった言葉や誰かが広めた感情ではなく、自分だけが感じていることを伝えるのが、なによりも大切。それを伝えることこそが、あなたが推しを語る意味になる。この世にまだない感想を生みだす意味になる。

「なんだ、自分オリジナルの感想をそのまま言葉にしたらいいの?簡単じゃん」と思われるかもしれません。でもこれって、意外と難しいんですよ。

 なぜなら人間は、なにも考えずにいたら、世の中に既にある「ありきたりな言葉」を使ってしまう生き物だからです。