総合電機メーカー大手の三菱電機とトヨタ系サプライヤーのアイシンが車載事業で合弁会社を立ち上げる。まだ設立に向けて合意した段階だが、関係者によると、早くも主導権争いが勃発しているという。特集『自動車・サプライヤー SOS』の#10では、両社の思惑を明らかにするとともに、持ち前の技術力を車載事業に生かし切れない三菱電機の苦悩、トヨタグループ内での葛藤や暗闘を浮き彫りにする。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
総合電機とサプライヤーの異業種タッグ
トヨタはアイシンの「単独行動」をけん制か
今年5月、大手総合電機メーカーの三菱電機が「異業種タッグ」を発表し、業界を騒然とさせた。トヨタ自動車系サプライヤー大手のアイシンと電気自動車(EV)用モーターやインバーターを製造する合弁会社を立ち上げ、電動化事業を強化していくという。
ところが、新会社をつくる両社は蜜月関係にあるとも言い切れないようだ。三菱電機や子会社の三菱電機モビリティ、アイシンの関係者は口々に「主導権は取られたくない」と吐露する。
しかもアイシンは、トヨタやデンソーと電動化事業の合弁であるBluE Nexus(ブルーイー ネクサス)を既に立ち上げており、両合弁会社がライバル関係になることを懸念する声も上がっている。合弁会社を巡っては、設立前から双方の思惑が交錯しており、苦難の船出となることが予想されるのだ。
いったい、三菱電機とアイシンは、どのような意図で異例のタッグを組んだのだろうか。
次ページでは、両社の思惑を明らかにするとともに、持ち前の技術力を車載事業に生かし切れない三菱電機の苦悩、トヨタグループ内での葛藤や暗闘を浮き彫りにする。