狂騒!半導体#9Photo:SOPA Images/gettyimages

デンソーが車載部品に次ぐ「第二の柱」として半導体事業の拡充を急いでいる。パワー半導体で富士電機とタッグを組もうとしているのもそのためだ。一方、自動車部品業界で競合する独ボッシュは、デンソーより一回り先に半導体分野の投資攻勢を急いでいる。デンソーに勝ち目はあるのか。特集『狂騒!半導体』(全17回)の#9では、デンソーが描く「半導体売上高1兆円」構想の実像に迫る。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)

経産省画策のパワー半導体「強制再編」
ローム・東芝に続く第二陣営の誕生

 デンソーが富士電機とタッグを組み、半導体業界に地殻変動を起こそうとしている。

 パワー半導体メーカーの“強制再編”を促そうと経済産業省が準備した「補助金の受け皿」として、デンソー・富士電機陣営が急上昇しているのだ(パワー半導体の再編については本特集の#3『【スクープ】ローム・東芝に続くパワー半導体「新連合」が判明!トヨタ巻き込む強力陣営の実力』参照)。

 仮にデンソー・富士連合が結実したならば、ローム・東芝連合に続く、第二陣営が誕生することになる。

 もともとデンソー社内では、ローム・東芝連合との連携を模索する構想があったようだ。ロームは、次世代パワー半導体の有望材料とされる炭化ケイ素(SiC)ウエハーを供給できる唯一の日本企業である。デンソーを含め多くのパワー半導体メーカーが、材料調達分野でロームと連携したいと考えるのは自然なことだ。

 また、東芝にも虎の子の会社がある。東芝傘下のニューフレアテクノロジーは、半導体の回路原版となる「フォトマスク」に電子ビームを使って描画する半導体装置で世界シェア9割を握る。

 もっとも、現在、デンソーがローム・東芝連合に接近できる方策は乏しい。そこで炙り出された現実解が、もともと近しい関係にある富士電機と協業することだった。

 いずれにせよ、パワー半導体では世界10指に入らないデンソーが、半導体事業の拡充に猛チャージをかけていることだけは確かだ。

 デンソーはいかにして、「半導体メーカー」への転身を図ろうとしているのか。次ページでは、半導体戦略で先行する競合の独ボッシュとの比較を図解で提示しながら、デンソーの「半導体売上高1兆円」計画の実像に迫る。