独自動車大手のフォルクスワーゲンが大規模なリストラに追い込まれる一方、独自動車部品大手のボッシュは快走を続けている。その理由は、自動車メーカーに唯々諾々と従うばかりでない独自の戦略と、ビジネスモデルの転換にあった。また、米テスラや中国BYDなど大手EVメーカーは部品の内製化を進め、サプライヤーの存在感が薄れている。そうした中、日系自動車部品メーカーは生き残ることができるのか。特集『自動車・サプライヤー SOS』の#11では、世界で進むサプライヤー再編などから日本の自動車産業の課題を明らかにするとともに、勝ち筋に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
絶不調フォルクスワーゲンとは対照的に
好業績のメガサプライヤー
アウディやポルシェなどを傘下に持つドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が不振にあえいでいる。独政府が電気自動車(EV)の補助金を停止したことや、比亜迪(BYD)をはじめとする中国の新興メーカーの台頭により、EVの販売にブレーキがかかったためだ。
2023年12月期決算は売上高が前年比15%増の3223億ユーロ(約52兆円)だったが、営業利益率は8.1%から7%に低下。直近の24年1~6月期決算は落ち込みが激しく、特に中国での販売台数が前年同期比7.3%減少した。業績不振を受けて、ドイツ国内の工場閉鎖も検討しているという。工場閉鎖となれば従業員のリストラも不可避だ。自動車メーカーが自国の工場を閉鎖するのは極めて異例だ。
VWをはじめとした欧州自動車メーカーの販売が鈍化する厳しい経営環境の中でも安定した収益を稼ぎ出すのが、ドイツの自動車部品メーカー最大手のボッシュだ。ソフトウエアや車載向け半導体などを幅広く製造する「メガサプライヤー」として知られる。
23年の売上高は前年比4%増の916億ユーロ(約15兆円)、EBIT(利払い・税引き前利益)率は前年から1ポイント改善して5.3%となった。同様にタイヤや自動運転技術などを開発しているドイツのコンチネンタルも増収増益を確保している(下図参照)。
世界的にEVの需要が鈍化する中で、なぜボッシュやコンチネンタルは安定して収益を上げられるのか。それは、自動車メーカーの方針に依存しない独自の経営戦略や提携戦略などにあった。次ページでは、海外の自動車部品メーカーが快走する秘訣を解明するとともに、日系サプライヤーの生き残る道についても迫る。