たとえば、浴室を拡張するだけで約40万円、手すりの設置に数万円、段差の解消(すのこの設置)に約25万円、シャワー用車椅子が約10万円、ドアの変更に約7万円、電動でシートが上下に昇降する浴槽ユニットバスに設置するバスリフト30万円など、風呂場だけでも100万円以上もかかる場合があります。

 また、階段をエレベーター(介護用階段昇降機)に改造するのにも100万円以上かかります。補助金が出る自治体もありますが、エレベーターが室内か室外か、直線型の単純なものかといった条件もあり、限度額も自治体によって異なっています。東京都のように補助金で100万円を賄えるところは少なく、多くが数十万円ほどです。

 他にも、居宅介護住宅改修費として上限20万円までの工事に補助金が出ますが、介護保険制度の自己負担割合は1~3割なので、20万円のうちの1割から3割が自己負担になります。これにはケアマネージャーなどが自宅を訪問して何が必要かを相談して決め、住宅改修にかかる見積書などの必要書類を市区町村に申請するなどの手続きが必要です。また、原則として一度しか使えません。

 つまり、最低限の改修なら少額で可能ですが、転落のリスク防止策としては完璧とは言えません。他にも市町村によっては補助金が出るところもありますが、古い家は特にそれ以上の改修が必要になります。100万円~200万円は準備しておく必要があるでしょう。

 こうして見ると、毎月の平均費用が5万円程度と安く思える在宅介護でも、初期費用を入れると思いのほか負担が大きいことがおわかりでしょう。

実は条件によってかなり差が出る!
施設での介護にかかるお金の実態

 一方、施設での介護を選ぶと本当に在宅介護より負担が大きいのでしょうか。

 前述のように、介護施設の費用は平均月12万円ですが、これには少なからず個人差があります。その差の原因は、要介護のレベルと地域、利便性などです。地方では平均の半分程度まで安くなるケースも多々ありますが、より評判がよくサービスが行き届いている施設だと人気が高く、都市部とあまり変わらないケースもあります。