施設より在宅のほうが
「幸福度」は本当に上がるのか?

 さて、「お金」の問題から「気持ち」の問題へと視線を移します。在宅介護と施設での介護では、「幸福度」はどちらが高いのでしょうか。

 多くの親が施設を嫌がるように、施設よりも家のほうが幸せかと思いきや、実はそうでもありません。LIFULLが行なったアンケート調査では、施設入所前より後のほうが精神的に安定している人が多いようです。入所後の変化を家族に聞いたアンケートでは、「性格が穏やかになった」が最も多く、次に「体や病気の症状が改善した」「明るくなった」「笑顔が見られるようになった」と続き、いずれも割合は20%前後でした。ポジティブな回答が4位までを占めています。

 他方、「認知症の症状が悪化した」「体力が落ちて動けなくなった」といったネガティブな回答もありましたが、ポジティブな意見の総量のほうが多い結果となりました。

 私の叔父の場合も、入所直後は「ヘルパーがひどいことする」などと怒ったり、「自分よりもひどい認知症の高齢者が多くて、何も楽しみがない」と落ち込んだりを繰り返していました。しかし、評判の良い別の施設に入所した後は、前述のアンケート結果と同様に性格が穏やかになり、明るく笑顔になっています。リハビリも多い施設なので、指の震えもほぼ治り、文字が書けるまでに認知機能が改善しました。

 もちろん、医療施設もピンからキリまでなので、評判を聞いて、事前に何度も説明を聞きに行き、よく調べて選ぶことが大事です。しかし残念ながら、叔父が暮らした2つの施設で共通するのは、自立心がなくなってしまったことです。ずっと車椅子生活なので、筋肉が衰えます。歩く練習をしては転んで、座骨やあばら骨を折ったり、顔を怪我したりを繰り返しています。施設側も人手不足のため、どうしても手間がかかることはできないので、車椅子やオムツでの生活が余儀なくされるでしょう。自分でトイレまで歩く自宅のほうが、自立できている期間は長くなるかもしれません。