また、毎月の費用以外に洗濯代や施設利用料、イベント料など様々な費用が追加され、月12万円で済まないことも多々あります。たとえば、民間の「介護付き有料老人ホーム」の費用は約15万から30万円が相場です。「サービス付き高齢者向け住宅」と「住宅型有料老人ホーム」は、これより少し安くて約10万円から20万円です。これらの多くは要介護のレベルに定められている定額の介護保険料を毎月支払います。

 他にも、公的介護施設には特養(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院(介護療養型医療施設)があり、それぞれ約10万円から15万円です。

 要介護のレベルだけでなく、所得によって決まる保険料の自己負担額が1~3割と大きく異なり、その差は10万円以上になる場合もあります。そのため、要介護を認定されたら所得を低くすることが必要です。もし大家さんとしての家賃収入などがある場合は、売却したり家賃を下げたりして、あえて所得を減らすなどの調整も大事です。

 どちらにしても、介護認定を受けるときは、誰も自宅に住んでいないなら売却して資金を工面したり、配偶者が家に住んでいる場合は家を担保にリバースモーゲージの契約にして、返済額を利息だけに減らしたりするなど、施設入所のために節約する必要も出てくるかもしれません。

 つまり、施設での介護は在宅介護と比べて必ずしも費用が大きく膨らむというわけではありませんが、入居時の条件によって大きな差が生じることに留意すべきでしょう。

誰もが視野に入れなければ
ならない在宅介護

 このように、在宅介護にも施設での介護にも不安はあるものですが、未曾有の高齢化が進む中、年老いた親を持つ現役世代は、みな在宅介護を視野に入れておいたほうがいいかもしれません。経済的に施設への入所を諦めなければならない人もいるでしょうし、親がようやく入所することに納得したと思ったら、空室がなくて入所できないという待機老人問題もあります。

 実は、施設は家族がいない一人暮らしの高齢者から優先的に入所させることが多く、配偶者や子どもと同居していると優先順位は下がります。被介護者の住民票を一人暮らしに見せかけるために、わざわざ配偶者が別のアパートを借りたという例もあるほどです。それでも、タイミングが悪く空室がなくなってしまったという例さえあります。コネや運が必要なこともあるでしょう。つまり、どんな人であっても、嫌でも在宅介護を視野に入れておく必要があるのです。