では、在宅介護の「幸福度」はどうでしょうか。

 これまでの多くの高齢者向けのアンケート調査では、家にいることが幸福度の前提となっています。「配偶者が傍にいる」「自宅に孫が来てくれるなど、子どもや孫と関りが持てる」「近所の友達付き合いができる」などがその理由です。

 ボランティア活動も幸福度を上げます。社会とのつながりを持てる活動は自己肯定力を上げるので、要介護リスクの減少や幸福感の向上につながるとされています。自身が高齢で多少ヨタヨタしていても、チームで参加できるボランティア活動は効果的です。

 塾の受付けや小学校の校庭開放の受付けなど、座っているだけでできるような作業をさせてもらうといいでしょう。地域の行政が管轄しているボランティアには、80歳以下などの年齢制限が設けられているケースもあるので、可能な年齢までは頑張ることです。

実は施設での介護のほうが
「幸せ」の要因が多い理由

 他にも幸福度が上がる要因として、「趣味が4つ以上あること」「運動をすること」などがあります。家族や友人との関りが少ない場合、施設のほうがイベントやリハビリなどの催しを通じて周囲とコミュニケーションをとりやすく、趣味を見つける手助けになります。絵画製作などをすると、周りの人と競い合う気持ちも芽生え、刺激になります。

 このように、在宅か施設かといえば、本人にとっての「幸福要因」はどちらにもあります。

 ただし、注意しなければならないのは、高齢になると幸福度の高い人と低い人に大きな差が出ることです。『老いの工学研究所』によると、幸福度が高い人と低い人の差は40代で9点、50代で17点、60代で21点、70代では23点と、年齢が上がるにつれて拡大していきます。親の将来を考えるなら、幸福度を重視して施設を選ぶほうがいいかもしれません。