「お金」と「幸せ」のバランスを
よく考えて介護に臨もう

 ちなみに、介護する側の人の「幸福度」に関しては、どうでしょう。

 一般的に、介護は大変すぎて幸福度を下げる要因の一つと考える人が多いと思います。確かに、2019年度までは幸福感を悪化させる要因でしたが、2020年度では幸福感を上げる要因になっています。これは、コロナ禍で人との関りが減ったので、「他者のために介護をしている」というボランティア精神が自己肯定力を高めたからです。

 ただ、家の中でずっと一人で介護をしていると、精神的にも体力的にも負担が増え、「共倒れ」という最悪の結果になってしまう場合もあります。子ども、兄弟なども同居していて家族が多く、介護を分担している場合は、費用が安くて負担が少ない在宅で、ヘルパーに2~4日間ほど訪問介護を依頼したり、デイサービス、訪問介護、介護施設とも連携できたりするといいでしょう。ちょうど今は制度を整備している段階ですが、日本も将来的には米国のように一人でも在宅介護をする人が増える可能性があります。

 訪問医や連携病院、24時間連絡できるホスピス、ホームドクターなどを探しておくことも必要です。特にホームドクターには、親が突然自宅で他界したときに死亡診断書を書いてもらわなければなりません。在宅での看取りを躊躇する医師もいて、電話してもすぐ対応してくれない場合があります。死因となった病名が不明で、警察に電話したりすると、検死をしなければいけなくなります。

 在宅介護では情報収集や人脈作りが必要となります。そして、いざというときのための施設入所やリフォームに充てる初期費用を考え、少なくても数百万円は準備しておくことが必要になります。

 いかがでしょうか。在宅介護と施設での介護に関する一般的なイメージと現実の間には、少なからぬギャップがあることに気づいたのではないでしょうか。介護に関わる「お金」と「幸せ」のバランスをよく考え、自分にとって最良の選択をしてほしいと思います。