今の若者たちは
働く前にいろんな条件を比較?
竹川 キャリアにしても、先のことを心配する傾向はありますよね。聞いた話では、入社試験の段階で、まだ結婚の予定がないのに「育児休暇はどのくらい取れますか?」と質問する学生さんもいるそうです。
でも、きっと、その方は真面目なんですよね。結婚しても働き続けたいなという気持ちがあるからそういう質問になる。
田島 たしかに、若い人の中には「しっかりと将来のプランをたてないといけない」と、就職活動を通じて人生プランそのものを完成させようとしている人もいますよね。
だけど真面目なのが災いして、プラン通りに進まないと心配になる。そうなると仕事に集中できない。結果的には、「目の前の仕事を通じて成長する」ということを放棄することになってしまうのです…。
お金のことも同じだと思いますが、「まずは与えられた仕事にベストを尽そう」「想定外だけどやってみよう」と、フォーカスする先を将来ではなく「目の前」に変えてみる。そうすれば、もともと真面目な彼らのこと、仕事の結果も出るし、そこから新たな気付きも生まれるかもしれない。そんな視点を持たせてあげるのが、上司として大切な仕事ですよね。
バブル時代を経験した上司の価値観と、就職氷河期に苦労して入社した若い人、先行きの見えない中で大人になりつつある若い子とは、価値観が大きく違いますよね。そこは年上の上司が歩み寄ってあげないとならないところだと思います。
竹川 以前、会社員時代の上司に頼まれて、某大学のキャリアデザインの授業でお話をしたことがあります。その時、女子学生から「結婚しても、出産しても働き続けられるものでしょうか?」という質問があったんです。その質問を聞いて、「私たちが20年前に悩んでいたことと変わってないじゃない!」と軽いショックを受けました。そのとき、思ったのですが、私たち働く女性たちも、もっと「働くって楽しい」ということを伝えていった方がいいな、と。「忙しくて大変!」じゃなくて(笑)。
私自身、結婚後も働き続けてきましたし、40代になって仕事が本当に楽しいと思えるようになりました。周囲をみても出産後も働き続けている人はたくさんいます。彼女には「あなたが仕事を続けていきたいと思うなら、今はいろんな方法や選択肢がある。まずはやりたいことをやってみようよ」と伝えました。
田島 考えすぎると決められなくなってしまいますよね。私は「やってみて、修正すればいいんじゃない?」と思うことも多いですが、それは我々バブル世代の考え方なのかもしれないですね。でも、思い切りのよさもときには必要なんじゃないかと思います。やっているうちに、世の中も自分も変わっていくものですから。
竹川 投資もそうですが、正直な話、未来のことを正確に知ることはできないですよね…。でも、世界全体に丸ごと投資することで世界経済の成長の波に乗っていこうといったことは考えられる。逆にいえば、「どの企業も成長しない」とか「景気はずっと低迷する」と考えている人は投資をしない方がいいかもしれません(笑)。
田島 先ほどの竹川さんの話の中で、特に「なるほど」と思ったのが、「株価は上るときもあれば、下がるときもある。そういった想定をちゃんとしておけば、相場が下がった時にもパニックにならずにすむ」というお話。
竹川 例えば、「株価が下がっている」ときは「買うときの価格も下がっている」ということなので、そんなときには「むしろチャンスかも。こういうときに買ってみようか」と考えてみてもいいと思います。もちろんちゃんとした商品を買うというのが大前提ではありますが…。
田島 プランを立てる時、うまくいかなかったときのことまでは、なかなか考えられないものですよね。特に若い人であればなおさら。だけど、望んで入った会社だって実際に働いてみないとわからない。どんな上司と巡り合って、どんな仕事をするのか。だから、「働くってそういうものだよね」という想定が出来ていれば、与えられた仕事が想定外のものであろうと、そこから成長できる、新しいことに出会ったチャンスだと考えられるようになると思うんです。
竹川 やはり真面目に考えてしまう学生さんが多いのでしょうか?
田島 そう。少しでも自分の予想していたことと違うと、不安になってしまう。
竹川 会社はいろんな人たちの集合体なので、一人の人間の性格のように、よいところもあれば、悪いところもありますよね…。
田島 そう。例えばある会社が気に入らなくて転職したとしても、自分の想定内だけで物事を考えていては、一生望む会社に出会うことはできません。自分が飛び込んだ環境に適応するという意識も必要なんです。でも独立したらバラ色かというと、そうでもないですしね(笑)
竹川 会社員よりも、さらに先行きが不透明という…(笑)。だから、会社がイヤだから独立する、というのはやめたほうがいいです。
田島 私は独立して5年なんですが、竹川さんはどれくらいですか?
竹川 私は2000年のITバブルの頃に独立したので13年になります。気づけば、干支が一周してますね(笑)。その後、リーマンショックがあったりして、景気や相場の波を実感した気がします。