「うれしい値!宣言」のポスターPhoto by Nami Shitamoto

セブン-イレブンが9月から低価格の「うれしい値!」シリーズを大々的に展開している。おにぎりや弁当など約270商品が対象。セブンは2024年3~5月期に、コンビニ大手3社では、唯一減収減益に沈んだ。低価格商品を投入することで、消費者の節約志向への対応を急ぐ狙いだ。では、実際に効果は出ているのか。ダイヤモンド編集部が入手した内部資料を基に、開始から1カ月の「うれしい値!」シリーズの主力商品の販売動向を公開し、効果を検証する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)

“独り負け”のセブンが
プレミアムからお手頃に転換

 2024年春、コンビニ業界は“序列激変”に揺れた。21年2月期以降、業界3位だったローソンの24年3~5月期の1店舗当たりの売上高(全店平均日販)が過去最高額の55万9000円となり、ファミリーマートの54万8000円を上回ったのだ。ただ、ファミリーマートは3位に転落したとはいえ、増収増益を確保し、日販も今年8月まで35カ月連続で前年を上回っている。

 最大のサプライズは最大手のセブン-イレブンの変調だ。24年3~5月期の全店平均日販は67万9000円と前年同期比で3000円減少。国内コンビニエンスストア事業の営業収益は同1.8%減の2兆249億円、営業利益は同4.4%減の612億円で、大手3社で唯一の減収減益に沈んだのだ。

 なぜ、セブンだけが“独り負け”ともいえる状況に陥ったのか。一つの要因が、首都圏から離れたエリアでの不振だ。『王者セブンが減収減益、コンビニ業界で「独り負け」!独自入手のエリア別売上高データから浮かぶ不振の真因』で解説したように、南九州や東北、北海道などで競合に比べて減収が目立っている。

 従来、セブンは「セブンプレミアムゴールド」に象徴されるように、高品質の高価格帯の商品に注力してきた。他の2社に比べて高価格が消費者の意識に根付いており、それがインフレによって裏目に出た可能性がある。

 壁に直面するセブンが投入した“切り札”が、低価格商品戦略だ。24年9月から低価格の「うれしい値!」シリーズの展開を大幅に拡大したのだ。

 同社は22年9月から、プライベートブランド「セブンプレミアム」の商品のうち、価格競争力の高い商品を「セブン・ザ・プライス」と銘打って販売してきた。さらに、今年7月からは定番商品を原材料の調達方法や製造工程を大きく見直しで、より手頃な価格に改めた「うれしい値!」シリーズに衣替え。「うれしい値!」シリーズは、8月末時点ではおにぎりやパンなどを中心に約20商品だったが、9月末までにカレーやチャーハンなどの弁当や総菜、菓子や飲料などが加わり、約270商品に広がった。

 セブンは24年の下期に「うれしい値!」シリーズを起爆剤に業績回復を狙っている。では、そのセブンの切り札の効果はいかばかりだったのか。実は、客数増など多くの恩恵はあったものの、“本丸”のてこ入れは道半ばといった結果だった。次ページでは、ダイヤモンド編集部が入手したセブンの内部資料を基に、「うれしい値!」シリーズの約1カ月間の販売動向のデータを公開し、効果を徹底検証する。