食品大手8社と卸売企業は物流データで連携する。伝票に書いていた情報を電子化し、データを複数企業が共同で管理するという。従来の商習慣を打破する画期的な動きだ。伝票主義の慣行は、トラックドライバーの長時間勤務の一因にもなっていた。中小の物流事業者では経営破綻も増えている。AI(人工知能)も活用した効率化に急ぎ全力で取り組まなければ、わが国の物流機能の維持はもう限界だ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
味の素、キユーピー、キッコーマン…
食品8社と卸企業の共同物流データ連携
6月中旬、国内の食品大手8社と主要な加工食品卸売企業が、物流データで連携すると報じられた。その背景には、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されるなどの、いわゆる「2024年問題」がある。高齢化、人手不足の深刻化でドライバー数は減少している。さらに、時間外労働の上限規制が始まったことで、これまでの物流体制を続けることは限界に近付いている。
2024年問題をきっかけに実際、経営破綻する企業も出てきている。東京商工リサーチによると、5月の道路貨物運送業の倒産が46件(前年同月比119.0%増)あった。なお、ドライバーの時間外労働上限が始まった4月は30件だった。規模別に見ると、資本金1000万円未満は29件、従業員数10人未満が31件、零細と中小の物流業者の倒産が多い。
わが国の物流を支えてきた零細・中小事業者の倒産が増加することは、食品など大手の企業にとって放置できない。世界経済の複雑化などで、物流機能の強化は高まりこそすれ低下することは考えられない。規制以外にも、物流業界の環境は厳しい。後継者不足や、円安と資源価格などの上昇によるコストプッシュ圧力で廃業に追い込まれる企業もある。
そこで今回、食品業界で物流に関するデータを複数の企業で共有するという。参画するのは、味の素、キユーピー、キッコーマン食品、ハウス食品、カゴメ、日清製粉ウェルナ、日清オイリオグループ、ミツカンだ。食品メーカー8社(・グループ)の売上高は、わが国の加工食品市場の2割に達する。
8社と連携する卸売業は、一般社団法人日本加工食品卸協会(日食協)の主要会員企業と報じられた。会員企業には大手の総合商社や酒類・食品の卸売会社が名を連ねる。
物流電子化の内容として、食品8社と卸売業は各社が持つ物流拠点のデータを共有する。1000以上の拠点をカバーするデータベースが構築される予定だ。荷物の情報をデジタル化し、荷下ろし業務の個社別管理を改める。それにより、ドライバーの労働時間の短縮を目指すという。