「部下に厳しいことを言えない」と悩む上司は少なくない。ネガティブで厳しい指摘は上司も部下も避けたいものだが、組織の成長のためには避けられない重要なステップでもある。上司が部下を叱れなくなった理由、そしてネガティブなことを相手に適切に伝える方法を考える。※本稿は、難波 猛『ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。
言わなければ伝わらない
厳しい指摘の重要性
人間は社会的な動物なので、所属している集団において自分の能力や貢献を(特に集団で権力を持つ相手から)否定されることには、強い反発や恐怖心、不満を抱きます。また、自己認識と違うネガティブな評価を受けることは自尊感情や自己肯定感が脅威にさらされるリスクを感じる場合があります。
大きなギャップが発生している部下に対して「必要なときには厳しいことを言わなければ本人のためにならない」ことは、なんとなく気づいている方は多いと思います。それでも、「部下の反発が怖い」「モチベーションを下げてしまいそう」などの理由で言えなくて困っている方も、やはり多いと思います。
実際、私のクライアントの声を聞いていても、「思っていることを、相手に伝わるまで伝えていない」ことが多いのが現状です。
「ベテランなんだから、ハッキリ言わなくても察してほしい」「期末評価の結果を見れば、自分の評価はわかるはず」「以前の面談で一度注意したので、大人なんだから軌道修正して欲しい」「過去の上司も指摘してこなかったので、できれば誰かに言ってほしい」
これでは、いつまで経っても部下が変わることはありません。