なぜ新たにパーパスという
概念が必要なのか

 ここまで徹底してやれば、企業の中に一貫したブレない基準が育つ。特に、これまでの企業理念ではなく、あえてパーパス経営をすべきだと説く提唱者たちは、新たなコンセプトのもと、企業がただ利益を追求するだけでなく、より広い社会的な使命や目的を持つべきだと強調している。このことには大きな意味があると思う。

 例えば、パーパス経営の提唱者たちはパーパス経営の原則として、次のようなことを主張している。

社会的責任を果たす

 企業の社会的責任は、持続可能な環境への配慮、公正な労働慣行の推進、地域社会への貢献などを通じて実現される。企業という主体は、利益追求の手段としてあるだけではなく、社会的価値の創造者としての役割を果たすべきである。

従業員のエンゲージメントと幸福度の向上

 パーパスが明確な企業は従業員のモチベーションを高め、職場の幸福感を増す。従業員が自分たちの仕事がもたらす影響を理解し、より意味のある仕事に従事していると感じられるような環境を提供する。

長期的な持続可能性

 短期的な利益を超えて、長期的な視点を重視する。企業が直面する社会的、環境的課題に対して責任を持ち、将来世代のために持続可能なビジネスモデルを追求する。

ステークホルダーとの関係

 顧客、供給者、地域社会など、全てのステークホルダーとの健全な関係の構築を重視する。企業はステークホルダー全員に価値を提供することに傾注し、これによって企業自体の長期的な成功を図る。

透明性と説明責任

 企業は自らの行動に対し、透明性を高く保ち、説明責任を負う。このことで、企業の信頼性が向上し、ステークホルダーから確実な支持が得られる。