なぜ企業はリスクを軽視するのか?

 こうしたリーダーの心配性については、経営学や心理学でも盛んに論じられてきたところだ。

 現代経営に心理学のアプローチを用いた著名な学者・ダニエル・カーネマンは、1993年の論文『臆病な選択と大胆な予測:リスクテイクに関する認知的視点』で、リスクを取る時に人がどのように考えるかを研究。以下のような分析を得たと言う。

《人は未来を予測する際、過去のデータや実績を無視して、自分のプランやシナリオに基づいて判断しがちです。これにより、過度に楽観的な見通しが生まれ、実際には達成困難な目標を設定することがあります。たとえば、企業が新製品を発売する際、成功する確率を過大評価し、リスクを軽視してしまうことがあります》

《逆に、リスクを取る際には、未来のチャンスを過小評価し、目の前の危険に過度に反応することもあります。たとえば、ビジネスで大きな利益を得るチャンスがあっても、その損失の可能性ばかりに目を向けてしまい、行動を起こせなくなることがあります》

《ビジネスの世界では、リスクを取ることで大きな利益を得られる可能性がある一方で、そのリスクが大きすぎると、逆に損失が発生する可能性もあります。このリスクと報酬の関係を慎重に分析し、バランスを取ることが重要です》