ロボタクシーが人間の仕事を奪う?

 このように運転に問題は発生していないが、それなりに存在感を高めているからこそ、中国のギグワーカーたちは心配している。中国では35歳でエンジニア職や専門職から追い出される社会風潮があり、会社から追い出された後、生活費や各種ローンを返済するために、Meituan(美団)などのフードデリバリーや、Didi(滴滴出行)などの配車ドライバー、宅配ドライバーなどで日銭を稼ぐことが珍しくない。多額の補助金により安く乗れるロボタクシーの普及は、滴滴のドライバーやタクシードライバーたちにとって大きな脅威だ。今年7月には、武漢のタクシー運転手らが「Apollo Goはあまりに安い交通費で自分たちの利益を侵害している」として、Apollo Goを提訴したいと言いだし、ネットで話題になったことがあった。

 武漢には約15000台のタクシーがあり、タクシー1台あたり1.5人の運転手がいるとすると、約2万人の雇用が影響を受けることになる。ここにさらにDidiの市民ドライバーも加わる。前述した通り、自動運転車の運転は慎重で、運転速度はゆっくりだ(動画)。数年の実績で口コミも広まり、「朝夕の通勤通学など急ぐときには、Apollo Goは絶対に乗らない」という声もあり、使い分けはされている。

 一方、ロボタクシーは走行を重ねることで速度が速くなることも実証済みだ。速度の問題が解決し、補助金が今後も出続ければ、死活問題までにはならないにしろ、タクシーが本来稼いでいた売上が下がってしまう。ロボタクシーを普及させるべく補助金を出すApollo Goサイドと、ドライバーを雇う地元企業やDidiがどう折り合いをつけていくかも、今後の注目点だ。