Apollo Goは中国11都市で営業中。あだ名は「サツマイモ」?
Apollo Goはバイドゥの自動運転プロジェクト「Apollo」が立ち上げた自動運転旅行サービスプラットフォームで、アプリを使って車両を呼び、用意されたポイントで乗車・下車する。客は後部座席に3人まで乗車でき、カバン1~2個か20インチ以下のスーツケース1個を載せられる。値段は手頃で、タクシーや滴滴出行(Didi、中国のUberのようなサービス)よりも安く乗車できる。中国で新サービスの導入期によく行われる「赤字覚悟で補助金を出している」おかげである。
2022年に北京で開催された冬季オリンピック関係者向けにスポット運転を行ったころから始まり、現在は北京、上海、武漢、重慶など11都市で有人試験運用サービスを提供している。
現在、特に盛り上がっているのは湖北省の省都・武漢だ。武漢の自動運転モデルエリアの担当者は「車両数、走行距離、走行可能面積などから武漢は世界最大の自動運転サービスが行われている」と胸を張る。武漢の対象エリアには数多くの乗車/下車ポイントがあり、アプリから登録して利用できる。6月には1カ月で1000台のロボタクシーが走り、計60万回の作業が発生した。つまり、1台あたり1日平均で20回の注文をこなし、客を運んでいることになる。
その武漢で、市民の反応はどうかを紹介していこう。現地では「サツマイモ大根」というあだ名がついている。武漢ではサツマイモは「愚か者」といった意味がある。武漢人の車の運転は荒く、道を譲ることなく車の割り込みを行ったり、歩行者に道を譲らなかったりするのが当たり前。そんな武漢人から見ると、Apollo Goの自動運転は慎重すぎて“愚か者”に見えるそうで、現地の運転習慣とは実に相性が悪い。
乗客のレビューを見ると、方向指示器を出さない左折車が対向車線からやってきて(中国は右側通行・左ハンドル)そのまま待っていたら後ろの車にクラクションを鳴らされたケース、渋滞する道路でライトを点けずに車線変更を強行する車がいて、自動運転車の前に割り込もうとされたケース、トラックが方向指示器を出さず、狭い車間距離でスリリングな追い越しをしてきたといったケースなどが投稿されている。自動運転車は基本的にクラクションを鳴らさず、すべての歩行者に道を譲り、黄色信号で全力疾走しないので、武漢の人たちからは「行儀が良すぎて臆病」と評されている。
走行ルートはある程度決まっていて、最短ルートの道路は通らない。武漢のメディア「長江日報」の市民の声掲示板では、武漢を流れる大河長江の両岸をつなぐ橋で事故が起き、Apollo Goが立ち往生しているのが通行の邪魔になっていたという書き込みもあった。こうした現地の声を聞いていると、確かにサツマイモ大根と言いたくなる気持ちもわかる。