ロボタクシーには「見えない運転手」がいる

 Apollo Goは自動運転レベル4で動いている。レベル4は「特定条件下における自動運転」、つまり自動運転が許されたエリアにおいて、システムがすべての運転タスクを実施することができるというものだ。

自動運転のレベル分け(国土交通省)自動運転のレベル分け。現在日本で市販されている車は、テスラや日産のプロパイロットを含めてほとんどがレベル2まで。レベル3の市販車は、法人向けに限定販売されたホンダレジェンドなど、ごく限られた例外的なものしかない(出典:国土交通省) 拡大画像表示

 しかしAppolo Goには、実は、ユーザーからは見えないリアルなドライバーがいる。ゲームセンターのゲーム筐体のような繭(まゆ)型の運転席が並ぶオフィスがあり、ここで無人運転車の運転を代行するリモートドライブが行える。大きな曲面スクリーンには、自動運転車の3台のカメラが映し出す映像が表示され、またそれとは別に計器パネルとナビが表示されたディスプレイがある。Apollo Goがなんらかの理由で一時的に状況に対処できなくなって交通効率に影響が出る場合には、車内の客と連絡し、状況に応じてリモートドライバーが運転を続行するようになっている。

 リモートドライバーだけではない。試験エリア内には道路2kmごとに平均1人(合計約200人)の地上乗務員が配置されており、現場にすぐに到着できるようになっていて、反復して運転レベルを向上させるのに多くのスタッフを雇っている。こうした安全担当スタッフは1日8時間勤務で、スマホを見て油を売ることはできず、だいたい月収7000元(約15万円)だ。入社前には2週間の研修も行い、さまざまな特別なケースや状況について学び訓練される。

 自動運転レベル4は「特定条件下においてシステムが全ての運転タスクを実施」というもの。Apollo Goに導入されたのはApollo第6世代になる最新システムで、当時安全性を極限まで追求したが、それでも「前方に障害物(人や車など)がない場合にのみ走行できる」というもので、リモート運転が必要になる場面がしばしば発生する。