このコメントはファンの注目を集め、ネット民の書き込みでは「殺(や)っちゃって」と表記されることもあった。注目していただきたいのは、これが倒置法の文だということである。日本語の普通の語順だと「やっちゃっていいんだね」となるが、これだと凄みが半減する。先に「いいんだね」を言うことがいかに重要か分かる。

アントニオ猪木と藤波辰巳
伝説のビンタ&倒置法の応酬

 こういう話をしたところ、清野さんから「飛龍革命のときにも倒置法が使われていた」との情報をいただいた。飛龍革命というのは、1988年に新日本プロレス那覇大会の控え室で起こった事件で、当時エースであったアントニオ猪木に対し、一番弟子に当たる藤波辰巳(現・辰爾)が自分にエースの座を譲るよう直訴したというものである。

 猪木は藤波さんにビンタをお見舞いしたが、藤波さんはひるむことなく猪木にビンタを張り返した。そもそも温厚で知られる藤波さんが激しく自己主張をしたこと自体「事件」だったが、さらに藤波さんはその場でなぜかハサミを取り出し、自分の前髪を切り始めた。その奇行のせいもあり、本件は長く語り継がれる出来事となった。

 飛龍革命のときになされている会話(とくに藤波さん側)は非常に聞き取りづらいのだが、ネットで調べてみると「書き起こし」が存在した。見てみると、確かに倒置法の文が頻発している。