3月某日、大手電機メーカーの開発部門に勤務する竹山浩さん(仮名・40代)のところに、人事部から1本の内線電話が入った。用件は、人材サービス会社が主催する「キャリアチェンジセミナー」研修への参加要請だった。
軽い気持ちで研修会場へ行ってみると、部署は違うが、同じ会社の社員が集められていた。その中には、社内でも“穀つぶし”として知られている人や、心身の調子を崩し、仕事に支障が出ている人も含まれていた。
研修内容は、「第二のキャリア設計への手引き」。過去の仕事を振り返り、自身のスキルを分析する。
要は、キャリアチェンジ研修とは名ばかりで、体のいい退職勧奨プログラムだった。研修が終わるころには、「このまま会社に残っても、自分の居場所はない」と、気持ちの整理がついていた。
退職の意思を伝えると、手続きは面白いほど簡単に済んだ。
竹山さんが勤めてきた大手電機メーカーの場合、法人契約を結んでいる再就職支援会社3社のうちの1社を選べば、再就職の手伝いをしてくれるシステムになっている。竹山さんの転職活動は始まったばかりだ。
リストラ対象が“本丸”へ
ついに始まった人余り
企業が“本気”のリストラに乗り出した。2000年代前半にも雇用調整局面はあったが、そのときの調整対象は、あくまで製造業の生産要員、海外要員が中心だった。だが、今回の調整対象は、“本丸”のホワイトカラー。予期せぬ退職勧奨に、候補者当人も「まさか自分が対象となるなんて……」とうなだれるケースも少なくない。