「上司も部下も、社会人全員が一度は読むべき本」「被害者や加害者にはならないためにもできるだけ多くの人に読んでほしい」と話題沸騰中の本がある。『それ、パワハラですよ?』(著者・梅澤康二/マンガ・若林杏樹)だ。自分はパワハラしない、されないから関係ない、と思っていても、不意打ち的にパワハラに巻き込まれることがある。自分の身を守るためにも、本書を読んで「令和のコンプライアンス意識」を身につけたいところだ。今回は特別に本書より一部抜粋・再編集して内容を紹介する。
恋愛経験や結婚歴をからかうのは、今の時代許される?
20代男性。職場の上司や先輩から「最後に彼女がいたのはいつ?」「そもそも彼女がいたことあるの?」などといつもからかわれる。「お前は結婚できないんじゃないの?」と言われてものすごく不快な気分だ。
【解説】
職場で彼女や彼氏がいるのか、誰それが結婚しているのかどうか、ということが話題にのぼることはありますよね。
恋愛の話題に触れられたくない人ももちろんいるかと思いますが、相手の恋愛経験がどのようなものかは、相手の人柄を知る上で有用であることもあります。
そのため、相手とよりよい人間関係を構築し、相手の価値観や人生観を知るため、という意味で、恋愛経験について話題にのぼること自体はありえます。
職場での何気ない会話の中で、恋愛経験についての話題が出た、という程度であれば、ことさら非難されることもないでしょう。
しかし、恋愛経験に関する話題は、それ自体が非常にプライベートな事柄であり、相手の自尊心や羞恥心に直結するものです。
加えて、相手の恋愛関係を知ろうとすることは、相手に性的関心があると見られる側面もあります。
そのため、相手の恋愛経験や結婚歴について必要以上に聞き出そうとする行為や、あれこれ批評したり侮辱したりする行為は、相手に強い不快感を与えがちです。
人間関係を構築するという意味では、むしろマイナスに作用する行為といえます。
したがって、相手の恋愛経験や結婚歴について相手が嫌がっているのに、ことさらに聞き出そうとしたり、話した内容をバカにしたりする行為は、業務との関連性、業務上の必要性、態様の相当性のいずれも認められないとして、パワハラと評価される可能性は大いにあります。
場合によっては、職場での許容されない性的言動として、セクハラと評価される可能性もあります。
部下の恋愛経験について、相手が回答したがらない場合は、無理に聞き出そうとするのは避けたほうがいいでしょう。
※『それ、パワハラですよ?』では、パワハラになるかどうかがわかりにくい「グレーゾーン事例」を多数紹介。パワハラから身を守るために、すべての働く人が読んでおきたい1冊。
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)
2006年司法試験(旧試験)合格、2007年東京大学法学部卒業、2008年最高裁判所司法研修所修了、2008年アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年同事務所退所、同年プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『それ、パワハラですよ?』(ダイヤモンド社)、『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。