「円安?」「国債?」「チャットGPT?」よく耳にするけれど、実際のところ何のことなのか、何が問題なのかわからないまま……そんな今さら聞けないニュースや用語の数々を、どこよりも楽しく、そしてわかりやすくご紹介します!大人気アニメ「秘密結社 鷹の爪」の吉田くんが新聞記者となって、世の中の経済ニュース・時事用語を基本からていねいに紐解き話題となっている書籍『「鷹の爪」の吉田くんが聞く!経済ニュースと時事用語がめちゃくちゃわかる本』の中から一部を抜粋、編集してお伝えします。

【「鷹の爪」吉田くんが聞く】鉄道も商店も、自治体さえも消滅する? 人口減が招く恐ろしすぎる未来イラスト/FROGMAN

本連載は、好奇心旺盛な「鷹の爪」吉田くんの質問を、先輩であるアカツキ記者が答えていく会話形式で構成されています。今回のテーマは「深刻な人口減少」です。

「異次元の少子化対策」って何?

吉田くん(以下、吉田):日本の人口がどんどん減ってるって聞きました。このままじゃ日本中がぼくのふるさとの島根県みたいに人がいなくなっちゃいますよ。何とかしてください。

アカツキ先輩(以下、アカツキ):政府も何も手を打っていないわけじゃないんだ。2023年には岸田文雄政権が、毎年3.6兆円程度をかけて児童手当を拡充したり、3人以上の子を育てる世帯の大学授業料と入学金無償化などを実現したりする「異次元の少子化対策」を打ち出した。2030年代に入ると若者人口の急減が見込まれ、それまでに少子化の傾向を反転させないともう人口減を止められないとみられており、政府は「2030年までがラストチャンス」と強調している。ただ、これらの対策も専門家からは「少なすぎるし、遅すぎる」と指摘されているんだ。

吉田:わ、ぼくの仕事と一緒じゃないですか。

【「鷹の爪」吉田くんが聞く】鉄道も商店も、自治体さえも消滅する? 人口減が招く恐ろしすぎる未来

日本が少子化対策にかけている費用を国内総生産(GDP)比でみると、フランスやスウェーデンの半分程度

アカツキ:自覚があるなら改善しろ。政府は戦時中に「産めよ、増やせよ」と旗を振った反省から、出産という個人的な問題に積極的に関わることをためらってきた面がある。現在はそんなことを言っていられないほど危機的な状況にあるわけだが、それでも日本が少子化対策にかけている費用を国内総生産(GDP)比でみると、世界に先駆けて少子化対策に取り組んできたフランスやスウェーデンの半分程度にすぎない。

吉田:そりゃ少ないですね。でも先輩、なんで人口が減ったらダメなんでしたっけ。ラーメンだっておそばだって、量が多けりゃいいってもんじゃないですよ。

アカツキ:たしかにな。「日本の人口は1億2000万人」というイメージがあるが、実は江戸時代から明治時代は3000万人ほどで安定していた。人口が急増したのは昭和に入ってからで、初めて1億人を超えたのは1967年と比較的最近なんだ。ちなみに、2070年に予想されている8700万人という人口は、日本でテレビの本放送が始まった1953年と同水準だ。

一番の問題は年金などの社会保障制度。2050年には1.4人で1人の高齢者を支える計算

吉田:じゃあ別に少子化対策なんかしなくてもいいじゃないですか。島根は人が少ない分、自然が豊かでトリケラトプスやモモンガがのびのびと暮らしてますよ。

アカツキ:島根の自然が豊かなのはすばらしいが、一番の問題は年金などの社会保障制度だ。1975年には7.7人の現役世代で1人の高齢者を支えていたが、2050年には1.4人で1人の高齢者を支える計算だ。現役世代の負担が重くなりすぎ、このままでは制度を維持できなくなる。また人口が減ると経済規模も小さくなって、GDPなどの経済力を含めた国の力も低下してしまう。食料やエネルギーの多くを海外から買わざるを得ない日本にとって、経済力の低下は死活問題だ。

吉田:人口減って恐ろしいですね……。今でも人口が少ない島根県はどうなっちゃうんだろう。

アカツキ:地方の人口減少は本当に深刻な問題だ。過疎が深刻化し、地域コミュニティーだけでなく自治体そのものまで持続できなくなるケースが増えると考えられている。人口減少が進むと鉄道・バスなどの公共交通や小売り・サービス業者の撤退を招き、暮らしやすさと雇用の両方が失われることで、さらに人口が減る――という悪循環が避けられない。税収減で道路や橋といったインフラや生活に不可欠な行政サービスの維持も難しくなっていく可能性がある。

吉田:そんなの困りますよ。じゃあぼく、島根県の人口を増やすため3年ぐらい里帰りしてきます!

アカツキ:帰ってこなくていいぞ、と言うとパワハラになるんだろうな……。なぁ、頼むから仕事してくれ。

※本稿は『「鷹の爪」の吉田くんが聞く!経済ニュースと時事用語がめちゃくちゃわかる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

※吉田くんとアカツキ先輩が活躍中のアニメ連載「そもそも?知りたい吉田くん」は朝日新聞デジタルで読むことができます。