減税されればうれしいが
「他の控除が減る」可能性も
国民民主党の試算によると、給与年収200万円の人で減税額は8万6000円、300万円では11万3000円だ。
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非課税ラインを引き上げると納税額が減り、手取りは増える。これが実現されると、年間7兆~8兆円の税収減となるといわれている。減税の規模としてはかなり大きいので、現実的ではないように思える。
実際のところ、基礎控除拡大による減税策は、国民民主党と自民党の政治の駆け引きの道具だ。玉木氏は自民党に対し「100%提案をのまないと、1ミリでも変えたらダメだというつもりはない」と発言しているようなので、基礎控除拡大はもっと少ない金額で手打ちが行われるだろう。
物価が上がっているので、基礎控除の拡大による減税は、うれしくない人はいない。しかし、税収減になる分の財源捻出のため、何か他の控除が減る可能性がある。
過去には、民主党が2009年の衆議院選挙で「子ども手当の大幅拡大」を公約とし、与党となった民主党は2010年から子ども手当を拡大したが、その財源として15歳以下の「年少扶養控除」が廃止された。
数年後には、子ども手当受給に所得制限がつき、年収の高い人は手当ゼロ、扶養控除の廃止による増税のみが残ることになった。
基礎控除の拡大は、所得のある人全てが減税になる策なので、実現されると筆者もうれしい。しかし、政治の駆け引きの道具として減税案が出てくると、財務省が財源確保のために何を出してくるかと思うと、素直に喜べない。今後の行方をしっかりと見ていきたい。