「いじり」が「ハラスメント」になる場合も 

 容姿について「いじって」いたことについて、

「相手との関係性によりますが、“いじり”も、ハラスメントになる可能性は十分にあります。『受け手がどうとらえているかによる』ところはありますが、相手が笑っているからといって嫌がっていないとは限らない。そもそも、相手がどのような反応をしていようが、容姿で笑いをとるというのは不適切です。世界的に見てもスタンダードなコミュニケーションとはいえません。これがハラスメントだととらえられてもおかしくはないと思います」

 と話す。

 そして、中野さんは、

「“いじり”は“いじめ”よりも、悪意なくエスカレートすることがある」

 と主張する。

「“いじり”とは、加害者側にとって『悪意がない』ということも多いです。明確な悪意や、人のことをおとしめてやろう、と思っているいじめよりも、『悪意なき』いじめの方が改善しにくいこともあるかもしれません」

 また、「職場」という環境での“いじり”は「特によくない」として、こう説明する。

 日本の職場は、上下関係がはっきりしており、同時に権力関係も明確になっています。今回のように、23歳の入社したての新人が、先輩社員に対して何かを言えるかというと、言えない立場であることがほとんどです。その力のバランスを無視して、自分が目上の人に言わないようなことを、自分より年齢や社歴が短く、自分に対して強く出ることができないであろう人に対して言うというのは、“相手を見下している”からできるわけです。人の目にはより悪質な行為として映ります」